研究課題
植物の主要な光受容体であるフィトクロムは、PIFと呼ばれる転写因子群を介して標的遺伝子の転写制御を行うことで、植物の光応答を引き起こすと考えられている。しかし我々は最近、フィトクロムの下流因子として新奇スプライシング因子RRC1を順遺伝学的に同定したことをきっかけに、フィトクロムが転写制御に加え、それとほぼ同じ規模で選択的スプライシング制御も行うことで、植物の光応答を引き起こすことを明らかにした。そこで本研究では、現在不明である、フィトクロムによる選択的スプライシング制御の分子機構解明を目的として、RRC1が当該制御にどのように関与するのかを明らかにし、さらに当該制御に関わる新奇因子の同定を試みる。本年度我々は、フィトクロムによる選択的スプライシング制御の標的遺伝子の1つであるグリセリン酸キナーゼ遺伝子が、フィトクロムシグナル依存的に転写開始点も変化させることを偶然見いだした。そしてTSS-seq解析を行い、転写開始点の位置と発現量をシロイヌナズナにおいて網羅的に解析した結果、フィトクロムが、従来から知られる転写量の制御に加えて、さらに別の2,000を超える遺伝子に対して、その転写量(mRNAの総量)を一定に保ったまま、転写開始点を変化させ、その結果、400以上ものタンパク質の細胞内局在が、フィトクロムシグナルに応じて変化することを見いだした(Ushijima et al., Cell 2017)。そして多くの遺伝子において、この転写開始点の変化が、その直後の選択的スプライシングパターンの変化を引き起こすことが明らかとなった。つまり、フィトクロムによる選択的スプライシング制御の一部が、転写開始点制御によって説明できることが判明した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
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