研究課題/領域番号 |
16H04810
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高橋 孝行 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (80197152)
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研究分担者 |
荻原 克益 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (00422006)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メダカ / 排卵 / 卵成熟 / ギャップ結合 |
研究実績の概要 |
1.メダカ排卵の律速酵素であるMT2-MMPの発現を阻害するカルベノキソロン(CBX)の作用の解析:ギャップ結合の機能阻害剤カルベノキソロン(CBX)により、排卵予定濾胞における排卵酵素MT2-MMP遺伝子の発現が阻害され、排卵が抑制される。当該年度では、その背景にあるメカニズムを探るため、MT2-MMP遺伝子の発現に関与する3つの転写因子(Pgr、c/EBPb、c-Jun及びFosl1a)へのCBXの影響についてさらに詳しく調べた。その結果、CBX処理がこれらの転写因子の発現には影響しないことを確定した。新たにPgrのリン酸化がCBX処理によって抑制されることを明らかにした。2.CBX処理によりもたらされる卵細胞と顆粒膜細胞における変化の解析:上記1に示したように、CBX処理によりPgrのリン酸化抑制がもたらされるという知見が得られたことから、この課題の調査についての重要性は低下したと判断し、さらなる調査は取りやめた。3.コネキシンの発現解析:前年度の解析から、メダカの排卵予定濾胞においては5個のコネキシン遺伝子の発現が示唆されていた。当該年度では、排卵予定濾胞におけるCx分子種の発現プロファイルをreal-time RT-PCRにより詳しく調べた。その結果、排卵が近づくとCx34.5からCx35.4への発現の転換が起こること、さらにこのコネキシン分子種の置き換えは濾胞細胞層において起こることが明らかになった。 当該年度では、排卵と卵成熟の関連性を調べる新たな実験にも着手した。単離した排卵予定濾胞を遠心して卵細胞内の分子の分布を乱すことにより、卵成熟の進行を停止させることが可能であるとの報告があることから、この処理により排卵がどのような影響を受けるかについて調べた。予備的実験から、排卵と卵成熟は独立していることを示唆するデータが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、3年間の研究期間内に以下の1~3の課題解決を目指している。課題1.メダカ排卵の律速酵素であるMT2-MMPの発現を阻害するカルベノキソロン(CBX)の作用の解析、課題2.CBX処理(ギャップ結合の閉塞)によりもたらされる卵細胞と顆粒膜細胞における変化の解析、及び課題3.コネキシン(ギャップ結合構成分子)の発現解析 研究期間のうち2年度目までの研究が終了した段階において、当該研究課題の最終目標を達成するという点では、順調に進められている。上記の課題2については、研究の進展に伴って実施する重要性が薄れてきており、今後実施しない予定である。他の課題1および課題3に関しては、新知見が得られている。以上の結果を踏まえて、当年度の総括として(2)おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究の進展状況は総じて順調であると考えている。上述の課題1~課題3については、今後、以下のように研究を進めていく予定である。課題1においては、新たにPgrのリン酸化がCBX処理によって抑制されるという発見を踏まえて、Pgrのリン酸化に関与するリン酸化酵素の探索と解析、さらにはリン酸化酵素の活性化機構等について調査を進める必要がある。課題2に関しては、本研究課題の立案当初は、MT2-MMP遺伝子の発現に影響を及ぼす卵細胞由来因子の存在を予測して、その因子の同定が必要になるであろうと考えた。しかし、これまでの研究から、卵細胞由来因子の重要性は低いという知見が得られつつある。よって、今後は卵細胞由来因子の探索は行わないことにする。課題3に関しては、排卵が近づくと濾胞細胞においてコネキシン遺伝子の発現転換が起こることが明らかになったことから、その意義について調査することが必要になる。今後、これらの調査を進めて、MT2-MMP遺伝子発現に関わる顆粒膜細胞同士の情報のやり取りと相互作用のメカニズムを解明するとともに、それが排卵責任遺伝子であるMT2-MMPの発現にどのように貢献するかについて明らかにする。もって、当該研究課題の最終目標である「排卵と卵成熟は連携するのか?」という疑問に答えたい。
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