研究実績の概要 |
1.メダカ排卵の律速酵素であるMT2-MMPの発現を阻害するカルベノキソロン(CBX)の作用の解析:ギャップ結合阻害剤カルベノキソロン(CBX)により、排卵予定濾胞における排卵酵素MT2-MMP遺伝子の発現が阻害され排卵が抑制される。この背景にあるメカニズムを解明するため、前年度に見出した「CBXによる転写因子Pgrのリン酸化阻害」に注目して解析した。その結果、排卵予定濾胞においてCBXによりcyclin I (Ccni)の発現誘導が抑えられ、それによりcyclin-dependent protein kinase 9 (Cdk9)が活性化されず、Pgrのリン酸化が起こらなくなる。MT2-MMP遺伝子の発現にリン酸化Pgrが不可欠であることから、CBX処理によりMT2-MMPの転写が起こらず、排卵が停止することが判明した。2.CBX処理によりもたらされる卵細胞と顆粒膜細胞における変化の解析:上記1に示したように、CBX処理による排卵停止のメカニズムが解明されたことにより、この課題の調査についての重要性は低下したと判断し、さらなる調査は取りやめた。3.コネキシンの発現解析:これまでの解析でメダカの排卵予定濾胞においては5個のコネキシン遺伝子 (Cx30.3, Cx34.4, Cx34.5, Cx35.4, Cx43.4) が発現していることを示した。当該年度においては、上記のようにCBX処理によってCdk9が活性化されないことによりPgrリン酸化が起こらないことが示されたことから、正常の排卵予定濾胞においてPgrリン酸化反応が進行する時期に濾胞に発現するコネキシンが関与すると考えられた。この観点からCx34.5およびCx35.4の2つのコネキシンが候補として絞られた。濾胞細胞層にCx34.5およびCx35.4が発現することを明らかにした。
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