研究課題/領域番号 |
16H04811
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
坂井 貴文 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40235114)
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研究分担者 |
坂田 一郎 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (80610831)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 消化管運動 / スンクス / ウルトラディアン / 迷走神経 / 交感神経 / モチリン / グレリン |
研究実績の概要 |
今年度は、スンクスを用いて、消化管のウルトラディアンリズムである周期的に起こる空腹期消化管運動(MMC) メカニズムの理解を目指すために、消化管運動の測定と十二指腸管腔内pH濃度の変化を同時に測定した。麻酔下スンクスの胃運動と十二指腸管腔内pH濃度の測定に成功し、モチリン投与によって胃強収縮が惹起され、このとき十二指腸管腔内pH濃度は速やかに低下することを明らかにした。 さらに、空腹期phaseIII収縮の終了するメカニズムがウルトラディアンリズムの解明に重要であると考え、phaseIII抑制機構を検討した。モチリンをphase I期に静脈内投与するとphaseIII様の強収縮を惹起したが、phaseIIにモチリンを投与しても強収縮を刺激しないことを明らかにした。また、phaseIIにGABAa受容体アンタゴニストであるビククリンを共投与するとその抑制作用が消失し、phase III様強収縮が惹起された。また、phaseIIIのピークに手を叩いて大きな音を出すことでスンクスを驚かせたところ、phaseIII収縮は即座に収まった。交感神経遮断薬であるレセルピンの連日投与によって、手を叩いて音をだすことによるphaseIII収縮の中断はなくなることを示した。 これらの結果から、迷走神経作動性収縮である空腹期のphaseII収縮ではモチリンの作用は抑制され、その抑制作用には迷走神経を介した末梢のGABAergicニューロンが関与していることが示唆された。また、phaseIII終了機構には、末梢のGABAergicニューロンは関与しないことが明らかとなり、phaseIII収縮の間は、交感神経の活性化で収縮が中断されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
消化管のウルトラディアンリズムでおこる収縮に重要であるphaseIIIの収縮運動メカニズムに交感神経の関与を明らかにすることができ、順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、胃収縮運動の抑制に関与すると考えられるsomatostatin、GLP-1等の消化管ホルモンに着目し、organ bath実験、無麻酔・無拘束下実験により、消化管運動に与える影響およびその作用機序を調べる。さらに、薬剤の脳室内投与実験を行うことで、MMCに影響を与えるホルモンの脳への直接作用を検討する。 さらに、脳内の作用点を明らかにすることを目的に、モチリン、グレリン等の消化管ホルモンの抹消投与により興奮する神経核をc-fos染色により同定する。直接作用を示す結果が得られたら、c-fos陽性神経核の破壊実験を行う。
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