研究課題
本研究は、申請者が新たにその有用性を見出した実験動物スンクスを用いて、空腹期収縮機構の解明を通して、消化管の生体リズムの理解とウルトラディアンリズムの発生機構の解明を目的にする。本年度は、小腸のI細胞で産生される消化管ホルモンであるコレシストキニン(CCK)による胃収縮運動に及ぼす影響を検討した。PCRクローニングの結果、スンクスCCKの533塩基対を同定し、103残基の推定アミノ酸配列を取得した。他哺乳類との相同性解析を行った結果、CCKの生理作用に関わるC末端側の8アミノ酸残基は全ての動物と完全に一致していた。また、スンクスCCKA受容体の全翻訳配列を含む1801塩基対を同定し、424残基の推定アミノ酸配列を取得した。スンクスCCKA受容体は他の哺乳類種と高い相同性を示していた。定量的PCRによりCCK mRNA発現分布を検討した結果、CCKは十二指腸で最も高く発現し、下部小腸にかけて徐々に発現が減少し、大腸で発現がわずかに上がる傾向を示すことを明らかにした。また、CCK免疫陽性細胞は消化管粘膜層で散在して観察され、open-type細胞とclosed-type細胞の2種類が存在し、また、CCK免疫陽性細胞密度は十二指腸で最も高く、下部小腸にかけて減少していた。さらにオーガンバスを用いた検討を行った結果、スンクス消化管組織に対するCCK-8投与では10-9 Mの濃度から濃度依存的な収縮刺激作用を示し、運動指数(MI)の最大値は胃で67.6%、十二指腸で97.1%、空腸で83.7%であった。また、この収縮はコリン作動性受容体アンタゴニスト及びCCKA受容体アンタゴニストにより有意に抑制されることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
計画通りに進捗している。
本年度は、消化管のウルトラディアンリズムである周期的に起こる空腹期消化管運動(MMC) メカニズムの理解を目指すために、somatostatin、GLP-1等の消化管ホルモンに着目し、organ bath実験、無麻酔・無拘束下実験により、種々のホルモンが消化管運動に与える影響およびその作用機序を調べる。さらに、十二指腸粘膜標本を用いてモチリンのperifusion実験によりモチリン分泌に関与する因子の同定を行う。細胞材料は十二指腸粘膜細切試料または単離粘膜細胞を用いる。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
Scientific Reports
巻: 8 ページ: 9176
10.1038/s41598-018-27458-2