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2016 年度 実績報告書

細胞内の3オルガネラ分裂マシンの構造と機能に関するゲノム形態学的解明

研究課題

研究課題/領域番号 16H04813
研究機関日本女子大学

研究代表者

黒岩 常祥  日本女子大学, 理学研究科, 客員教授 (50033353)

研究分担者 永田 典子  日本女子大学, 理学部, 教授 (40311352)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード細胞・組織 / オルガネラ / 分裂マシン / 超微細構造 / ゲノム形態 / PD/MDリング / PODリング / ダイナミンリング
研究実績の概要

本研究の目的は、3オルガネラに共通の外側の分裂マシンに注目し、その主構造である「PDリング、MDリング、PODリング」と「ダイナミンリング」の構造と機能をゲノム形態学的技術で解析し、その進化的意義を解明することである。2010年PDリングが糖繊維の束であり、リングの中にある糖合成酵素(Glycosyltransferase)によって作られることが明らかとなった(Science)。そこで、本年はMDリングが類似の構造で出来ているかを調べた。その結果、組織化学的手法によりMDリングも糖を含んでいることが解明されたが、ミトコンドリア分裂マシンが小さく解析は進まなかった。そこでカンプトテシリン処理によってミトコンドリアの分裂を阻害すると、ミトコンドリアが大きくなると共に分裂マシンも大きくなることが分かった。この方法を今後の研究に利用する。
一方PODマシンもナノ繊維の束のリングとダイナミンリングから構成されたシンプルな構造であった。この装置は更に小さく単離が難しかったが、開発の結果、漸く生化学的に分析できるようになった。これを使ってペルオキシソームの分裂・分断の機構を解析する。
オルガネラの分裂マシンの共通性や進化的役割について緑藻と紅藻間でゲノム形態学的に解析するため、極小緑藻Medakamo hakoo (メダカモ)の微細構造の観察とゲノム情報の解読を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

申請者らは、世界ではじめて原始紅藻Cyanidium類で色素体(葉緑体)とミトコンドリアの分裂・増殖に必須な、分裂装置(マシン)を発見した。分裂マシンは内(基質側)と外(細胞質側)の分裂リングからなり、内側のリングは、細菌由来のFtsZリング等、外側のリングは宿主由来の電子密度の高いナノ繊維束の分裂リング(PDリング、MDリングと命名)とダイナミンリング等から構築されていた。2013年Cyanidioschyzon merolae (シゾン)で単膜系のペルオキシソームでも細胞質側に、複膜系オルガネラの外側の分裂リングに類似した分裂リング(PODリング)を発見した。
複膜系の葉緑体のPDリングが糖のナノ繊維の束であることが解明されていたが、今回それより更にサイズの小さなMDリングやPODリングの構成成分の解析が可能となった。今後この視点からPD/MDリング、PODリングを同時解析することが可能となった。
当初計画では無かったことであるが、小さくシンプルなペルオキシソームの分裂マシンが純度高く単離できるようになり、構成成分が明確になってきた。このため「試験管内でそれらの物質を混合することによって人工的に分裂リングを合成する」ことが可能となった。このことは大きな進展であろう。
またメダカモはシゾンと同様に細胞当たりの単・複膜系オルガネラがそれぞれ1個であり、それらを光の明暗で同調分裂させることができた。又細胞核、ミトコンドリア核、葉緑体核の核ゲノムの粗塩基配列が解読されてきた。その結果、これまでに明らかになった紅藻シゾンの分裂マシンの形成に関わる遺伝子とメダカモゲノム内遺伝子と比較解析する事が可能となった。紅藻と緑藻のオルガネラ分裂に関わる共通の遺伝子の解明と、更に真核生物のオルガネラ分裂マシン共通の構造と機能、その進化的意義の考察につながると期待できる。

今後の研究の推進方策

基本的には、当初の計画通りに研究をすすめ、3分裂マシンのナノ繊維束リングの構成物質とダイナミンリングの形成方法を明らかにする。この推進に当たっては電子顕微鏡による微細構造の解析とそれに関わるゲノム情報を対比させながら研究を進める。試験管内での人工的分裂リング形成されることが可能になってきたので、この方法を利用して分裂マシンの分子構造の理解を進めたい。
最終目的として、紅藻シゾンと緑藻メダカモのオルガネラ分裂マシンの構造と機能、そしてその進化的意義をゲノム形態学的に比較解析し、真核細胞の分裂・増殖の共通原理と誕生における分裂マシンの役割を考察する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Surfing the vegetal pole in a small population: extracellular vertical transmission of an ‘intracellular’ a deep-sea clam symbiont.2016

    • 著者名/発表者名
      Ikuta, T., Igawa, K., Tame, A., Kuroiwa, T., Kuroiwa, H., Aoki, Y., Takaki,Y., Nagai, Y., Ozawa, G., Yamamoto, M., Deguchi, R., Fujikura, K., Maruyama, T. and Yoshida, T.
    • 雑誌名

      Royal society open science

      巻: 3 ページ: 160130

    • DOI

      10.1098/rsos.160130

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Cell-nuclear genome size of the ultrasmall unicellular freshwater green alga, Medakamo hakoo 311 as studied by DAPI staining after microwave oven treatments: II. Comparison with Cyanidioschyzon merolae, Saccharomyces cerevisiae (n, 2n) and Chlorella variabilis.2016

    • 著者名/発表者名
      Kuroiwa,T.,Ohnuma,M.Imoto,Y.Misumi,O.,Nagata,N.,Miyakawa,I.,Fujishima,M. and Kuroiwa, H.
    • 雑誌名

      Cytologia

      巻: 81 ページ: 69-76

    • DOI

      10.1508/cytologia.81.69

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Intracellular structure of the unicellular red alga, Cyanidioschyzon merolae, in response to phosphate depletion and resupplementation.2016

    • 著者名/発表者名
      Yagisawa, F., Kuroiwa, H.,Fujiwara, T. and Kuroiwa, T.
    • 雑誌名

      Cytologia

      巻: 81 ページ: 341-347

    • DOI

      10.1508/Cytologia 81.341

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] シゾンとメダカモから探る真核生物の増殖の基本原理2016

    • 著者名/発表者名
      黒岩常祥
    • 学会等名
      日本植物学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 単細胞藻類シゾンを用いたオーロラキナーゼによるミトコンドリア分裂制御メカニズムの解明2016

    • 著者名/発表者名
      岡村枝里佳 松永朋子 坂本卓也 黒岩常祥 松永幸大
    • 学会等名
      日本植物学会
  • [学会発表] ペルオキシソーム分裂装置の構造と機能解析2016

    • 著者名/発表者名
      井元祐太 阿部雄一 奥本寛治 本庄雅則 黒岩晴子 黒岩常祥 藤木幸夫
    • 学会等名
      日本植物学会
  • [学会発表] 紅藻シゾンと極小緑藻メダカモから真核細胞の誕生・増殖の基本原理を探る2016

    • 著者名/発表者名
      黒岩常祥 黒岩晴子 永田典子 三角修己 田草川真理 井元祐太 八木沢芙美 乾弥生 松永幸大
    • 学会等名
      日本植物学会
  • [学会発表] 藻類における脂質合成に関わる細胞小器官の機能について2016

    • 著者名/発表者名
      黒岩晴子 三角修己 井元祐太 大沼みお 黒岩常祥
    • 学会等名
      日本植物学会
  • [学会発表] 単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolae の構成的プラスミドと抗生物質耐性マーカーの開発2016

    • 著者名/発表者名
      大沼みお 藤原崇之 井元祐太 黒岩晴子 宮城島進也 田中寛 黒岩常祥
    • 学会等名
      日本植物学会

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公開日: 2018-12-17  

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