今後の研究の推進方策 |
本研究の目標の達成のため、今後は以下の研究を推し進める。 まず、コオロギの罰学習が予測誤差理論とattentional theoriesのどちらにより説明できるかの切り分けのためには、1回の条件付け訓練で罰学習を成立させる学習実験系の確立が必要である。これまで私たちが用いてきた塩水を罰刺激とする条件付けは、学習成立に少なくとも2回の訓練が必要であり、その条件は達成できない。そこでより強い刺激としてキニーネを無条件刺激として用いた罰条件付け系の立ち上げを試み、1回の訓練で学習が成立するかを調べる。 ところで、仮にコオロギの学習を最もよく説明するのが予測誤差理論であることがわかった場合、さらに一歩踏み込むべき問題がある。それは、予測誤差理論によりコオロギの学習がどこまで説明できるか、その有効性とその限界を明らかにすることである。そこで抑制性学習現象、すなわちoverexpectation, inhibitory learning, latent inhibition, spontaneous recovery, reinstatementに着目した解析を行い、それらが予測誤差理論によりどこまで説明できるか検討する。 次に、報酬に関する予測誤差の情報を伝えるオクトパミンニューロンと罰に関する予測誤差の情報を伝えるドーパミンニューロンとの間の相互作用とその機能的意味についてさらに解析する。 最後に、ゴキブリのキノコ体に投射するオクトパンニューロンの形態学的同定およびそれらのニューロンからの細胞内記録をさらに推し進める。
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