研究実績の概要 |
2018年度は、以下の実験を行って成果を得た。GABAノックアウト個体のレスキュー実験によって、変態促進因子であるGABAの下流にあるニューロペプチドは、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)であることを確認した。ホヤには7種類のGnRHリガンドがあり、それらは3つの遺伝子(gnrh1, gnrh2, gnrhx)に分かれてゲノムにコードされている。どのGnRHリガンドがホヤの変態に必要であるかを確認するため、それぞれの遺伝子のノックアウト実験を注意深く行った。その結果、gnrh1, gnrh2ともに変態に必要であることを示す結果を得た。但し両者の表現型には異なる点があり、特にgnrh2は尾部吸収だけでなく成長に必要である可能性が示唆される結果となっている。一方、GnRHの受容体をコードする4種類の遺伝子についてノックアウトを実施し、変異体を系統化して機能を調べている。これまでのところ、受容体の2番が体組織成長に必要であることを示す結果を得ており、この受容体を通じて、変態時の体組織成長が生じる可能性が高い。GABA受容体がどのようにGnRHニューロンを制御するかを示すために、GABA受容体が作用すると予想されるカルシウムイオンの動態を、単離したGnRHニューロンへGABAを作用させることで観察した。しかしながらカルシウムイオンの上昇は確認できなかった。代謝型受容体として、GABAは特殊なパスウェイを用いてGnRHの放出制御を行っている可能性があり、引き続きその分子的実体を追求する。GnRHの下流のパスウェイの包括的な理解を目指し、ニューロペプチド産生の変異体において発現レベルの異常を示す遺伝子を同定した。その中にはGABA制御に関わる遺伝子が含まれており、これらを中心にまた、GABA-GnRH経路とは別に、変態中の成体組織成長に必要な因子として甲状腺ホルモン経路を同定した。
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