研究課題
同一植物における開花時期の違いは、種内における生殖前隔離をもたらし、これが世代を重ねることによって種分化をもたらすことが想定される。本年度の研究では、マメ科ミヤコグサを用いて、主に日長を主とする複合要因で開花時期が制御される機構について、アブラナ科ハマダイコンを対象にして、低温要求性(春化)が主な開花制御要因となっている機構について解析を進めた。ミヤコグサの開花時期の種内多型に関わる研究では、沖縄本島において日本列島の分布域を網羅する132系統の共通圃場実験を行った。これまでに得られている愛知県岡崎市と宮崎県におけるデータに加え、より極端な環境での開花時期多型を記録することができた。沖縄での開花所要日数データを加えた全ゲノム関連解析では、複数の形質データを用いる解析モデルにより、既知の開花遺伝子を含む有力な候補遺伝子を検出した。これまでに得られていた開花時期多型データに加えて、沖縄での形質データを用いることで解析力を上げることができ、より明瞭に候補遺伝子を得ることができた。ハマダイコンでの研究では、前年度までに春化による開花制御に関わる遺伝子がFLC-A と COL-5 であることがわかったために、春化を必要とする北方系統と、必要としない南方系統を対象にしてqRT-PCRでそれぞれの発現を解析した。なお、ハマダイコンにおいてFLC-Aは開花促進を、COL-5は開花抑制の機能をもっている。春化を施す処理の解析の結果、 北方系統ではFLC-Aだけが一定量発現する事で開花が促進されているのに対して、南方系統ではFLC-A と COL- 5 の両方が発現しつつ、かつFLC-Aの発現量が極めて高いレベルにあることがわかった。このように、拮抗的な二つの遺伝子が、南北系統間では発現様式を変えていることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
前年度の天候不順によるミヤコグサの屋外育成(沖縄県糸満市における農地)が今年度は順調に出来、播種から開花開始所要日数のデータを多くの系統と個体において計測することが出来た。これによって、開花に関する適応的な遺伝子座の推定を行いやすくなった。また、圃場の環境データも微細に取ることが出来たので、開花に関わる環境要因についても詳細なデータを取得することが出来た。
平成30年度が最後年度であるために、今後に新たな研究費目において継続を行いたい。とくに、本研究と並行して仙台で進められていた研究結果との融合も計る計画である。
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