研究課題
氷河期の海面変動は,現在の海藻類の地理的分布や各地域集団の遺伝的多様性に直接的な影響を与えたと考えられる。日本周辺でも氷河期には高緯度域に分布する海藻類はより低緯度のレフュジアで生き延び,氷河期終了後,再び分布を広げ,現在の地理的分布が成立した。一方,日本海は最大氷期には海面低下による閉鎖化でほぼ淡水化し,ほとんどの海藻類は死滅したとされる。しかし,対馬暖流の流入状況については議論があり,またレフュジアの位置についても知見は少ない。そこで日本周辺の沿岸に分布し,異なる生育水深や塩分耐性を示す海藻類の各地域集団の遺伝的多様性の解析を行い,最大氷期以降の系統地理を明らかにすることを目的として研究を行った。これらの条件に合致する種として,褐藻イロロ,ウミウチワ,ヘラヤハズ,ハバノリ,セイヨウハバノリ,ツルモ,ワカメ,紅藻オキツノリ,ワツナギソウを対象として,cox1, cox3,nad3-16S rDNA,tatC-tLeu遺伝子領域などの塩基配列に基づく系統解析と各ハプロタイプの地理的分布の解析を行った。その結果,地理的な構造が認められなかったウミウチワとセイヨウハバノリを除くと韓国,西日本太平洋および瀬戸内海,東日本太平洋の各沿岸域にそれぞれ遺伝的に近い集団が分布するという傾向が見られた。また,セイヨウハバノリでも地理的な構造とは一致しないが,本州以南では大きく2つの集団が認められた。これらのことは,最大氷期に日本沿岸において2つの隔離されたレフュジアが存在した可能性を示している。また,ウミウチワ,ヘラヤハズ,ワツナギソウなどの種では日本海沿岸においても多様な遺伝子型が認められ,また本州太平洋沿岸と共通するものも認められたことと浮遊性有孔虫殻の酸素同位体比による解析結果から,最大氷期においても日本海へ対馬暖流の流入がある程度継続していた可能性が示唆された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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