本年度は最終年度であるため、以下の4項目を実施した。 ①FISH法によるCandidate division細菌群の可視化:下水処理場の活性汚泥を対象にCandidate division細菌群のFISH法による可視化およびホルムアミド濃度条件の再確認を行った。活性汚泥を対象にFISH法を行った結果、BD1-5門に属するグループのみから良好なFISHシグナルが得られた。 ②メタゲノム解析:活性汚泥を対象にメタゲノム解析を行い、BD1-5門のドラフトゲノムを構築できた。ゲノムから推察される代謝機能として、解糖系の酵素の一部が欠けていることが示唆された。 ③活性汚泥中のBD1-5門を対象としたMAR-FISH:①で最適化されたBD1-5門を標的とするFISHプローブとメタゲノム解析から推察される代謝のうち入手可能な放射性同位元素標識有機物を選定し、MAR-FISH法を行った。その結果、セリンとアミノ酸混合物の取り込みが確認されたが、グリシン、グリセロール、グルコース6リン酸、有機酸の取り込みは確認されなかった。 ④TM7門の集積培養:既にMAR-FISH法により基質利用特性が明らかとなっているTM7門に対して集積培養を試みた。集積培養の評価には定量PCR法によるコピー数の増加を指標とするが、以前より用いていたプライマーセットはTM7門以外の細菌も増幅し、定量値として過大評価することがわかった。そこで、数種類あるTM7門を標的とするプライマーセットの候補を4つ選定し、活性汚泥内のTM7門の定量に適しているプライマーセットを選定することができた。このプライマーセットを用いて集積培養を行った結果、糖およびNアセチルグルコサミンを有機基質として増殖可能であることが明らかとなった。また、他細菌の死骸も基質として増殖可能であることが示された。
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