研究課題/領域番号 |
16H04838
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
饗庭 正寛 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (80751990)
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研究分担者 |
中静 透 総合地球環境学研究所, 研究部, 特任教授 (00281105)
黒川 紘子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, その他部局等, 主任研究員 等 (70515733)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シカ / 樹皮 / 機能形質 / 動物植物相互作用 |
研究実績の概要 |
苫小牧および和歌山の樹皮サンプルの分析を継続した。苫小牧サンプルについては、新たに、内樹皮の微量元素含量(ナトリウム、マグネシウム、リン、カリウム、カルシウム、鉄等)、リグニン、セルロース、ヘミセルロース含量を測定した。また、和歌山の内樹皮の 水分含量、可溶糖類含量、デンプン含量、タンニン含量、フェノール含量、炭素含量、窒素含量(水分含量以外は内樹皮のみ)の分析も行った。 分析の結果に基づき、樹皮の形質値およびその季節・成長段階に伴う変化を2つの森林間で比較した。その結果、含水率、タンニン含量、フェノール含量は和歌山の樹種で有意に高く、窒素含量は苫小牧の樹種で有意に高かった。どちらの森林でも共通して、樹皮の相対的な厚さは成長とともに低下し、冬にはデンプンが可溶糖類に転化されていた。ただし、冬に残存するデンプンの量は和歌山で多くなる傾向が見られた。 苫小牧研究林における樹皮形質とシカの樹皮嗜好性(若木のみ対象)関係性の解析については、解析手法として、非常に予測性能が高いことで知られる勾配ブースティング法を新たに採用し、また微量元素やリグニン、セルロース、ヘミセルロースの含量を新たに説明変数に加えた。その結果、被食発生頻度20%を閾値として嗜好種と非嗜好種に分けた場合、28種中27種の嗜好性を正しく判別可能であった。また、予測に重要な形質は、フェノール含量と樹皮全体の含水率で、どちらも嗜好性に正の影響を与えていた。 これらの結果から、シカの嗜好性との関係を念頭に置いた樹皮形質の測定において、季節・成長段階の影響は限定的であること、化学成分の中では特にフェノール含量の優先順位が高いことがわかった。この結果は、今後、樹皮形質のデータベース化を推進する上での重要な指針として活用できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
化学分析の進捗が予定よりやや遅れたため、計画を変更して、サンプル地点の拡大よりも、既存サンプルの分析完了に労力・予算を優先的に配分した。その結果、データベース化の指針がほぼ確定できたため、今後はサンプル地点の拡大に注力したい。苫小牧における樹皮形質とシカ嗜好性の関係のモデリング等、その他の解析については、ほぼ想定通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で確定されたデータベース化指針に則り、サンプリング地点や対象樹種の拡充に取り組む。また、その結果を活用した、より一般性の高い樹皮形質と嗜好性の関係の解析、樹皮形質と生態系機能に重要な葉や材の形質との相関の解析、シカの嗜好性が森林生態系機能に与える影響のシミュレーション等、仕上げの解析を行う。
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