研究課題
病原体の遺伝子配列には長年にわたる宿主との攻防の歴史が刻まれていると考え、ビックデータに資する遺伝子配列を定量的に取り扱う生態学の新しい分野を開拓した。特に、インフルエンザの遺伝子配列を利用し、バイオインフォマティクスと数理科学の手法を駆使して、ウイルス進化という時空間を超えたマクロな振る舞いを捕捉する新たなデータサイエンス研究を推進した。例えば、経時的な遺伝子配列データから集団内に蓄積・固定し、支配的になる変異を複数特定することに成功し、それらが共進化している可能性を示した。さらに、この共進化が実現するメカニズムを詳細に分析するために、進化生態学と集団遺伝学のアプローチを融合させた配列進化シミュレータを開発した。これらのドライ解析から得られた知見は、候補となる遺伝子を選択的に欠失・破壊できるリバースジェネティクスという方法を用いて、ウェット解析によって現在検証している。配列進化シミュレータについては、生態学および医科学分野に点在する様々な問題解決に適用できると考えられ、国内外で高く評価されている。
1: 当初の計画以上に進展している
研究期間の4年間で、研究代表者は本課題に関連した10件以上の国際会議に招待され、また、Proc Natl Acad Sci USA 2019, Proc Natl Acad Sci USA 2018, Cell Host & Microbe 2017, Proc Natl Acad Sci USA 2017, Proc Natl Acad Sci USA 2017, PLoS Pathogens 2017, Nat Med 2017等の一般誌を含む国際雑誌から20報を超える論文を発表した。
昨年は、開発した手法により計算された流行可能株の候補の中から実際に流行する株を予測する計画であったが、本点が完了していないので今年度は引き続き取り組む。特に、ハイブリッド力学系が持つ各種パラメータの適切な確率分布を推定する必要がある。在までの人口集団に蓄積された集団免疫を計算し、翌年最も流行しそうな株を適応度に基づいて提示するが、解析がうまくいかない場合は、機械学習のアプローチを駆使して現象論的モデリングを融合させることでこの点をクリアすることを考えている。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 295 ページ: 800-807
10.1074/jbc.AC119.010366.
Journal of Theoretical Biology
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