研究課題/領域番号 |
16H04848
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西村 剛 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (80452308)
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研究分担者 |
徳田 功 立命館大学, 理工学部, 教授 (00261389)
香田 啓貴 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (70418763)
森本 直記 京都大学, 理学研究科, 助教 (70722966)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人類学 / 行動学 / 進化 / 動物 / 生物・生体工学 / ヘリウム音声 / 喉頭 / 吹鳴実験 |
研究実績の概要 |
発声器官である喉頭の軟骨と筋、靭帯の構造を比較分析するために、高解像度MRIを用いて、テナガザル等の画像データを収集した。高音で大音量の音声が特徴的なテナガザル類は、他のサル類に比べて、声帯を構成する声帯筋が貧弱であるが、声帯を大きく伸長させる効果がある外側輪状甲状筋と後輪状披裂筋が発達していることを見出した。これらの形態学的特徴は、その特徴的な音声生成に適応的な変異であると考えられる。この成果を、学会発表し、論文化に着手した。ニホンザルの音声の条件付け訓練過程の分析により、サル類における音声の随意発声メカニズムがヒトと異なることを示した成果を論文化し投稿した。また、ニホンザルの生体ならびに摘出喉頭の声帯振動のEGG分析により、その多様な音声をつくる発声メカニズムを明らかにした。声帯振動は、声帯の内外転および呼気流の強弱により調整されており、ごくわずかな変化によって異なる音声タイプへと遷移することを示した。また、その声帯振動は,おおよそヒトの7歳児でみられるものに類似した。これらの結果は,ヒトを含む霊長類における発声メカニズムの共通性を示す。また、ウィーン大学より研究協力者を招聘し、新たな吹鳴実験装置を構築した。それを用いたマカクザルの摘出喉頭による吹鳴実験では、声帯と同時に、仮声帯を振動させうることを示した。それにより、基本周波数を大きく下げる効果があることが示された。数値シミュレーション分析による仮声帯の振動メカニズムの分析を進めた。X線テレビによる観測分析では、ニホンザルは音声を発するのに、喉頭の位置を大きく下げることを確認し、喉頭が下降しているヒトとは異なる声道形状変化の運動があることを論じた。サル類に見られる喉頭の大きな運動は、声帯振動の安定性を損なうと考えられる。このようなサル類の特徴から、ヒトの話しことばに対する発声制御の適応的変化を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ウィーン大からの研究者招聘もあり、日本側での吹鳴実験装置の開発が予定より早く進展し、実験推進スピードが飛躍的に向上した。また、テナザザルでの声帯近辺の形態学的分析が進み、その機能適応が明らかにされた。このように、実験ならびに形態学的研究の分析手法が確立したので、所期の目的である声帯振動を含む発声機構のヒト化の解明が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
実験装置と手法が確立したので、データの収集をさらに加速し、早期の成果とりまとめに向けて研究を推進する。
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