研究課題/領域番号 |
16H04852
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
恒次 祐子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00360397)
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研究分担者 |
石橋 圭太 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (40325569)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 心拍変動性 / 嗅覚刺激 / 全身的協関 |
研究実績の概要 |
昨年度までに検討した各種生理指標の測定手法を組み合わせ,乳児被験者を対象ににおい呈示時の生理的な応答の測定を行った。被験者は月齢1~4か月の乳児11名とし,嗅覚刺激は樹木の芳香性成分であるリモネン,α-ピネン,および対照として無臭の空気を用いて行った。乳児はラックに寝た状態で2分間安静とし,その後2分間においを呈示した後に,再度においを呈示しない状態で2分間の安静とした。その間心電図および脳血液動態の測定を行った。11名のうち,入眠や啼泣のあったデータは除き,3種類のにおい刺激全てのデータを取得することができた6名分のデータについて解析を行った。 また本年度においては,平成24~26年度に科研費基盤研究(C)において測定した,のべ33ケースの心拍RR間隔データについて再精査を行った。RR間隔データから心電波形を疑似的に復元し,ノイズの除去を行った。ノイズ除去が可能であり,かつ3種類のにおい刺激全てのデータが揃った10ケースについて解析を行った。以上より解析対象は17ケースとなった。 心拍数は,においと呈示条件(安静/におい呈示)の有意な交互作用が認められ,下位検定の結果,リモネン呈示中に安静時と比較して有意に心拍数が低下した。ノイズ除去前のデータではこのような傾向は認められなかったため,ノイズ除去によるデータ精度向上に成功したと考えられる。心拍変動性については,これまでは成人と同じ帯域(低周波成分(LF): 0.04~0.15Hz,高周波成分(HF): 0.15~0.4Hz)で分析を行ってきたが,0.01Hz~0.11Hzの帯域を0.01Hz間隔で分割して積分値を求め,においの影響を検討した。結果として特定の周波数においてにおいの影響が認められ,影響を受ける心拍変動性の帯域は,成人と異なり,極めて高い周波数帯域までおよんでいることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に検討した生理的な測定手法を組み合わせ乳児被験者11名の測定を行うことができた。また,過去に取得したデータの精査方法についても検討し,心電データのノイズを除去することにより,これまでに認められなかったにおいの影響を抽出することができた。以上より本研究課題は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
得られた結果は今年度中に国際誌に投稿する予定である。また引き続き被験者実験を実施し,心拍データだけではなく,脳血液動態も合わせた解析を行う予定である。
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