研究課題/領域番号 |
16H04853
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
染田 英利 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 医学教育部専門課程, 助教 (70627695)
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研究分担者 |
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
橋本 正次 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (50138682)
申 基チョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 助教 (50569283)
石田 肇 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70145225)
覚張 隆史 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 特任助教 (70749530)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 安定同位体比分析 / 出身地域推定 / 戦没者遺骨鑑定 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、安定同位体比分析と濃度分析を組合わせた元素分析(以下”元素分析”と表記)による身元不明遺体の出身地域推定の方法を検討するをものである。平成29年度は、その一環として、その一環として先の大戦における フィリピン共和国(以下、”フィリピン”と表記)における戦没者遺骨収集で問題となっている現地住民と日本兵の遺骨混合問題への対応を想定し、象牙質コラーゲン中の硫黄同位体比δ34Sの計測を行い、その日本・フィリピン出身者の遺骨分別での有効性について検討を行った。 今回の検討に用いた試料は、自衛隊病院・医務室で抜去した歯牙15本(北海道から沖縄の出身者を含む)を用いた。フィリピン人のものとしては、フィリピン中部ビザヤ諸島 パナイ島にて収集した歯牙15本を用いた。硫黄同位体比の計測には、総合地球環境学研究所の軽元素安定同位体比測定用質量分析装置(S-IRMS)を用いた。 日本出身者及びフィリピン出身者のδ34Sの値は、最小値、最大値及び平均±1標準偏差(‰)は、日本出身者で(4.18, 6.30, 4.96±0.64)、フィリピン出身者(2.79, 14.7, 7.51±3.34)であった。日本出身者は比較的狭い範囲に分布しているのに対し、フィリピン出身者はこれを含有する広い範囲に分布していた。 日本・フィリピン出身者の分別については、δ34S の7.0‰をカットオフ値とすると、それ以上の値を示す試料はフィリピン人出身者遺骨となり日・比今後遺骨のうち66.6%をフィリピン出身者として分別できるとの結果となった。 フィリピンにおける収集遺骨の地元住民、日本人の2群の分別において、 硫黄同位体比δ34S分析は有望な指標として期待できると考えられる。今後、コラーゲン中の炭素、窒素同位体比を組み合わせることで更なる分別精度の向上が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属機関での実験助手の雇用契約行為が、研究費入金後でないと認められなかったため、試料分析に若干の遅れを来している。
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今後の研究の推進方策 |
試料収集は順調であるため、研究推進には分析のペースを速めることが必要となる。平成30年度からは、所属機関においても年度当初から実験助手の契約行為が可能となったため、ネックとなっていた試料精製が進み分析の加速が期待できる状況となっている。
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