研究課題
環境条件と発生過程で撥水性が変化するのか明らかにするために、接触角と表面構造の解析を行った。異なる環境条件で栽培したイネ品種における第2葉と3葉の葉身向軸側の接触角を測定した結果、低照度条件下で栽培した葉はコントロール条件に比べて接触角は低かった。走査型電子顕微鏡を用いてこれらの表面構造を観察したところ、コントロール条件では、多くの乳頭状突起がありワックスの結晶で覆われていたのに対し、低照度条件では乳頭状突起は少なく表面のワックス結晶は薄かった。発生過程段階ごとに接触角を測定した結果、撥水性に大きな変化は見られなかったが、表面構造からは発生段階が上がるごとにワックス結晶が多くなっていた。このことから環境の変化に伴い、表面構造や撥水性は変化するものと考えられた。次に、撥水性を支配する遺伝因子を明らかにするために、原因遺伝子のマッピングを行った。低い撥水性を示し乳頭状突起に異常を示した9系統を用いて詳細な解析を行った結果、5つの系統において二つのクチクラワックス合成に関与する遺伝子に変異が認められた。さらに、品種間での撥水性の多様性を明らかにするため、世界のイネ・コアコレクション(WRC)61系統を用いて、撥水性の評価と表皮の微細構造の観察を行った。その結果、いくつかの系統において接触角が比較的低いことが明らかとなった。また、簡易走査型電子顕微鏡を用いてこれらの表面構造を観察したところ、乳頭状突起の形状が他と異なる系統が確認された。このことからイネ品種間で表面構造や撥水性に差があると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
一部の計画については、進捗に遅れがあるが、全体的には順調に成果が出ているため。
今後も計画通りに研究を進める予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Breeding Science
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