研究課題
これまでの結果から、qBRX-6遺伝子座は典型的な量的形質であり、形質値は環境要因に大きく左右され、かつ原因遺伝子は複数座乗している可能性が想定された。そこで今年度は、qBRX-6内に座乗し、生物時計及び出穂期の遺伝子であるMa1/SbPRR37/SbHd2遺伝子に注目し、この遺伝子そのものが高糖性遺伝子の一つであるかどうかに焦点を絞り、研究を進めることにした。まず、qBRX-6を有する品種「SIL-05」(出穂期は中生)をリシーケンシングし、全ゲノム配列を解析した。その結果、この品種は遺伝的固定が完全ではなくヘテロ領域も見つかったが、PRR37領域については固定されており、特に目立ったゲノムレベルの変異(重複、転座、逆位など)は見出されなかった。次に、SIL-05及び他品種のPRR37アレルについて検討した。この結果は以前の我々の結果と一致し、SIL-05アレルは野生型アレルと比較して10ヵ所のアミノ酸が置換及び欠失していた。一方、早生品種74LH3213は、第一エキソンにフレームシフトを起こすnull変異が起きていた。以上、SIL-05のアレルの特殊性が明らかとなったが、機能獲得型(野生型)アレル、機能欠失アレル、部分的機能欠失アレル、またはneomorphやhypermorphなどのいずれかが不明であった。そこで、このSIL-05アレル、機能獲得型(野生型)アレル、機能欠失型アレルの3つのアレルを有するゲノム断片を供試し、日本晴背景でPRR37遺伝子座が機能欠失型に置換したイネの染色体断片置換系統SL-33に形質転換することで、このSIL-05アレルについて検討した。その結果、出穂期を表現型の指標とした場合、SIL-05は部分的に機能を欠失したアレルであることが明らかとなった。このことから、このアレルの特殊性が高糖性への寄与している可能性も考えられた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Bioresour Technol.
巻: 265 ページ: 542-547
10.1016/j.biortech.2018.07.039.