研究課題/領域番号 |
16H04863
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
加藤 鎌司 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (40161096)
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研究分担者 |
西田 英隆 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (30379820)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 育種学 / コムギ / オオムギ / 出穂期 / 分子遺伝学 |
研究実績の概要 |
ムギ類における出穂期不安定性の遺伝機構を明らかにするために,本年度は下記に示す系統育成及び遺伝解析を中心として研究を実施した。 コムギ系統「超極早生」の出穂期不安定性に関わると考えている新規早生遺伝子(exh-1)の3つの同祖遺伝子のうち,3B染色体長腕末端のexh-B1遺伝子について座乗領域の絞り込みを行った。「超極早生」×「きぬいろは」RILs系統(CKRIL-54)と「超極早生」を交雑して作出した雑種後代を供試して,圃場出穂日の分離分析を行うとともに,3B染色体の参照配列(IWGSC)に基づき新規に開発したSSR及びSNPマーカー遺伝子型との対応に基づき,候補領域を約0.7Mbのゲノム領域に絞り込んだ。IWGSCの遺伝子予測に基づくと,候補領域に座乗する遺伝子は3個であり,このうちの1つがexh-B1の原因遺伝子であると考えられた。 「超極早生」がもつもう一つの早生遺伝子exh-2については,「超極早生」×「Geurumil」の雑種後代を用いて,DArT-seq法を利用したゲノムワイドなバルク分離分析を行った。その結果,新規早生遺伝子(exh-2)の座乗領域の候補となり得るゲノム領域を複数個検出することができた。 日本のオオムギ品種の早生化に大きく寄与した光受容体遺伝子HvPhyCと概日時計遺伝子Ppd-H1について,出穂期不安定化に及ぼす効果および両遺伝子の相互作用を解明するために,「春播型早木曽2号」の遺伝的背景をもち,HvPhyCとPpd-H1の対立遺伝子組合せが異なる4種類のNILsを育成しており,本年度はB2F1個体の中から目的の遺伝子型をもつものを選抜し,戻し交雑を行った。 また,遺伝的背景が「春播型早木曽2号」であり,「Golden Promise」の形質転換能を有するNILsを育成することを目的とし,両品種を交雑してF1個体を育成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コムギの新規早生遺伝子(exh-1)については,3B染色体長腕末端のexh-B1遺伝子の座乗領域を約0.7Mbのゲノム領域に絞り込むことに成功した。本領域に座乗する遺伝子は3個であることから、研究期間内に原因遺伝子を特定できると考えている。 第2の早生遺伝子exh-2については、DArT-seq法を利用したゲノムワイドなバルク分離分析により,座乗領域の候補となり得るゲノム領域を複数個検出することができていることから、研究期間内にゲノム領域を特定できると考えている。 オオムギについても系統育成が順調に進んでおり、これらの材料を用いた出穂期の解析も進行中であることから、当初の研究目的を達成できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
コムギの新規早生遺伝子(exh-1)については,世界の多様な遺伝資源コレクションを用いた候補遺伝子の配列多様性解析、ならびに遺伝子発現解析を実施することによって、原因遺伝子を特定する予定である。 第2の早生遺伝子exh-2については、座乗領域の候補となり得るゲノム領域における配列多型を集中的に解析し、exh-2と密接に連鎖するDNAマーカーの特定を進める予定であり、この解析により候補領域が絞り込まれると期待している。 オオムギも含めて出穂期の解析が進行中であることから、今後、出穂期遺伝子型と出穂期不安定性との対応を詳細に解析する予定である。
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