研究課題/領域番号 |
16H04869
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
湯淺 高志 宮崎大学, 農学部, 教授 (40312269)
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研究分担者 |
井上 眞理 九州大学, 農学研究院, 教授 (60091394)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ダイズ / アミノ酸代謝 / 老化 / オートファジー / 分岐鎖アミノ酸 / 遺伝子発現 / ササゲ / 栄養シグナル |
研究実績の概要 |
本研究では,ダイズの葉身老化における主要なタンパク質分解系のオートファジー(autophagy:自食作用)の制御に働く分岐鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acid, BCAA)に着目して,ダイズ葉の遮光処理により光合成を停止させた場合の,BCAA代謝酵素遺伝子(GmBCATs)の発現プロファイルを調査した.BCATsには細胞質,ミトコンドリア,葉緑体など細胞内局在を異にする複数の分子種がある.すでに糖欠乏処理により顕著に誘導されることを報告されているGmBCAT1は,遮光処理後,4日と8日において発現の上昇が観察された. 一方,ミトコンドリア局在が推定されるGmBCATXは,遮光処理に応答して他よりも顕著な発現増加が観察された.このことから光合成低下に伴い,エネルギー供給を維持するためにミトコンドリア局在のBCATがBCAA分解を利用した呼吸基質供給に働いていると示唆された.さらにBCAA分解促進にともなう細胞内BCAAプールの減少はTORシグナルカスケードを介したオートファジー誘導にも働くと推測される.また乾燥 ストレスに応答したササゲ葉身の老化進行についてクロロフィル含量(SPAD)と光合成最大収率(Fv/Fm)の変動をモニターした。「莢あり+乾燥区」では、SPAD値が乾燥処理8日目から10日目にかけて減少した。また、ザイモグラムの結果から10日目で液胞プロテアーゼが活性化されることが分かった。オートファゴソーム形成に働くATG8i(オートファジー関連遺伝子)の発現量は、コントロール区に比べて乾燥区では早期に増加し、「乾燥+摘莢区」では増加しなかった。以上の結果から乾燥にともなう光合成停止およびシンク機能の両者が葉身における糖飢餓シグナルとして働きオートファジー活性化を介して老化を促進することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、以前に報告した糖飢餓応答性BCATに加えて遮光処理で顕著に発現を上昇するミトコンドリア局在GmBCATXは,を同定した。遮光によるミトコンドリア内でのBCAA分解促進減少がTORシグナルカスケードを介したオートファジー誘導にも働くことが示された。今後、Tilling法によりGmBCATXのノックアウト株をダイズ変異ライブラリーからスクリーニングする予定であり、今回、BCAA分解に働く第一候補遺伝子を同定できたことは大きな成果であった。.また乾燥ストレスに応答したササゲ葉身の老化進行についてオートファゴソーム形成に働くATG8i(オートファジー関連遺伝子)の発現が増加しすることから、結果から乾燥にともなう光合成停止およびシンク機能の両者が葉身における糖飢餓シグナルとして働きオートファジー活性化を介して老化を促進することが示唆された。そこでササゲの乾燥応答性老化促進メカニズムにおけるBCATの役割を調べるための候補遺伝子を絞り込む上でダイズBCATの同定が大きな意味があった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ダイズのBCAA含量増強に関わるBCAA分解酵素BCAT、種子特異的油脂分解酵素SDP1の遺伝子を特定しており、これらの遺伝子をノックアウトして、BCAA増強、脂肪含量向上に向けた変異体の選抜を佐賀大学穴井教授と共同研究によりTILLING法を利用して進めている。またダイズのBCAT遺伝子、SDP1の栄養シグナルに応答した遺伝子発現調節についてリアルタイムPCR及び、それらの遺伝子のプロモーターに結合する転写因子の探索を進めている。BCATのミトコンドリア局在及び関連する転写因子の機能について細胞生物学レベルで解析するためにGFP融合コンストラクトを作成して、タマネギ表紙細胞とパーティクルガンにより一過的発現実験を予定している。
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