研究実績の概要 |
本研究において我々はダイズの葉身の遮光処理に応答した老化にさいの主要なタンパク質分解を担うオートファジーの活性化メカニズムに着目した.分岐鎖アミノ酸(BCAA)の細胞内プールの現象が酵母や動物細胞におけるオートファジー誘導シグナルとなることが報告されていたが高等植物でもBCAA減少がオートファジー誘導に関与するかどうかを検討した.ダイズのゲノム情報からBCAA特異的アミノ基転移酵素(BCAT)ファミリーを調査して,そのうちBCAA分解するミトコンドリア局在型BCAAアミノ基転移酵(mtBCAT)を同定して,発現解析を行った.ダイズ葉身への遮光処理および芽生えへのスクロース飢餓処理によるオートファジー誘導のモデル実験系を用いて,オートファジー誘導時のアミノ酸代謝遺伝子の発現誘導,アミノ酸含量変化の関係を調査した. ダイズ芽生えへのスクロース飢餓処理および遮光処理に応答してGmBCAT2の誘導に加えてGmBCATXがさらに顕著な発現増加した.ダイズ葉身のBCAA含量はコントロール区では増加する一方, 遮光区では速やかに低下した.この結果からダイズにおいても遮光処理による糖欠乏がBCAA分解とBCAAプール減少を介してオートファジーを活性化することが示唆された. また遮光処理とスクロース飢餓処理においてプロリン分解に関与するProDH遺伝子の発現増加とプロリン含量が低下することが明らかとなった.このことは老化に伴うアミノ酸転流やアミノ酸異化反応に必要なグルタミン酸の供給量を増加させるために、細胞内プロリンがプロリン脱水素酵素(ProDH)によりグルタミン酸への変換されてることが示唆された. ダイズと同様にイネにおける遮光に応答した葉身老化および乾燥に応答したササゲ葉身の老化においてもmtBCAT遺伝子誘導とBCAAの分解が老化とオートファジー誘導に関与することを明らかにした.
|