研究課題/領域番号 |
16H04870
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
羽方 誠 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 上級研究員 (80450336)
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研究分担者 |
和田 博史 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 上級研究員 (40533146)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高温不稔 / 花粉 / イネ / オミクス解析 / プレッシャープローブエレクトロスプレー質量分析 / 遺伝子組換え |
研究実績の概要 |
本研究は、閉鎖型人工気象室隣接型プレッシャープローブエレクトロスプレーイオン化質量分析法を駆使した1花粉代謝産物解析と、隣接する花粉を対象としたマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析とを統合したオミクス解析により、高温による不受精要因を分子レベルで明らかにした。 方法として、花粉の代謝産物解析については、高温花粉不稔耐性の強弱品種を使用し高温処理を行い、その高温環境下で生育するインタクトな状態のイネの雄蕊中の1花粉にプレッシャープローブを挿入し、ピコリットルの高粘性花粉溶液を採取した直後、これを超純水で希釈した上で、ピコリットルプレッシャープローブエレクトロスプレーイオン化質量分析法によりリアルタイムに代謝産物の分析を行った。その結果、高温に対して応答した花粉粒中の代謝産物に明確な品種間差があることが示唆された。 また、花粉の遺伝子発現解析については、高温処理後の花粉から微量であるが品質の高いRNAを抽出してマイクロアレイ解析を行う方法を構築し、高温下の花粉内で起こるイネ遺伝子の発現変動から高温不稔への関与が想定される複数の遺伝子を選別した。そして、それら遺伝子を花粉特異的に過剰発現および発現抑制する遺伝子組換イネの作出をほぼ終えた。今後、種子が得られた個体について導入配列を固定させた後代系統を生育させ、高温下で耐性を評価することにより、高温不稔に関与する遺伝子を特定できる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
閉鎖型人工気象室隣接型プレッシャープローブエレクトロスプレーイオン化質量分析により、高温下で1花粉中の代謝産物の解析を行ったところ、高温不稔に密接に関与すると考えられる花粉代謝産物の品種間差異を明らかにすることができた。また、高温下の花粉内で起こるイネ遺伝子の発現変動から高温花粉不稔への関与が示唆される複数の遺伝子を選別後、計画に沿ってこれら遺伝子の過剰発現および発現抑制体の作出を順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
花粉細胞の代謝産物の解析は、昨年度までに得られた高温不稔耐性の強弱2品種から採取した花粉溶液の代謝産物データを、原著論文として取り纏めて投稿する。また、高温下の花粉内で起こるイネ遺伝子の発現変動から選抜した遺伝子を過剰発現および発現抑制させたイネの高温不稔耐性を評価し、高温花粉不稔への関与を明らかにする。それらの結果を合わせ、高温花粉不稔に関与する代謝経路を特定し、高温不稔による収量低下の抑制に向けた耐性品種開発と栽培技術の構築に繋げる。
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