研究課題/領域番号 |
16H04871
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
村山 秀樹 山形大学, 農学部, 教授 (40230015)
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研究分担者 |
板井 章浩 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (10252876)
羽生 剛 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (60335304)
森 茂太 山形大学, 農学部, 教授 (60353885)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | セイヨウナシ / 果実成熟 / 炭水化物 / デンプン / 糖 |
研究実績の概要 |
セイヨウナシは,果実にデンプンを貯蔵養分として蓄積し,成熟中に可溶性糖へと分解することが知られている。この過程には,酵素であるアミラーゼがかかわっているとされている。しかし,果実の成熟過程におけるα-アミラーゼの遺伝子発現に関する報告は少ない。そこで本研究では,それらの遺伝子発現パターンを解析し,デンプン分解との関係を検討した。 実験には,山形大学農学部学内圃場植栽の‘バートレット’を供試した。試験区として樹上成熟区,適期に収穫した果実を20℃で追熟する追熟区,0℃で貯蔵する低温区を設け,収穫適期から4日ごとに果肉を採取した。サンプルは凍結乾燥後,デンプン含量を酵素法により,糖含量を高速液体クロマトグラフィーにより測定した。また,遺伝子発現はα-アミラーゼ遺伝子の中でRNA-seqで発現量の高かったPCP010985,PCP012578,PCP026151,PCP032427の4つの遺伝子についてリアルタイムPCRで解析した。 その結果,果肉のデンプン含量は,追熟区と低温区ともに減少した。とりわけ追熟区では12日目に大きく減少し16日目に消失した。これに対して,樹上成熟区では大きな変化はなかった。糖について,総含量は3試験区で大きな差はなかった。しかし,樹上成熟区ではソルビトールが減少し,スクロースが増加した。4つのα-アミラーゼ遺伝子のうち,PCP026151は追熟区と低温区で発現量が増加し,特に追熟区において12日目に顕著に増加した。 以上の結果から,セイヨウナシ果実では収穫後にデンプンが分解し,α-アミラーゼ遺伝子であるPCP026151の発現量が12日目以降で急激に増加することが判明した。このことから,PCP026151が追熟後期のデンプン分解にかかわっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,ナシ属果実(セイヨウナシ,ニホンナシ,チュウゴクナシ)におけるデンプン蓄積・代謝のダイナミックな相転換の生理学的意義を明らかにすることを目指している。これまでの研究において,セイヨウナシの晩生品種である‘ル・レクチエ’ における果実発育・成熟中の光合成速度を測定した結果,光合成速度は幼果期に高く,満開128日後にはほぼゼロになること,また,この時期に果肉のデンプンは蓄積から代謝への相転換を起こすことを明らかにしている。4年間の研究期間の後半に入った本年度はこれまで明らかにした現象の機構を解明するために,次世代シーケンサーによるRNAseq解析に着手した。また,昨年度の実績報告書の今後の推進方策のところで,後半は論文発表にも力点をおくと記載したが,今年度は,3つの論文がアクセプトされた(1つは印刷中)。これらのことから,本研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度が研究機関の最終年度になるため,デンプン蓄積・代謝のダイナミックな相転換の生理学的意義を炭水化物の相転換がもつ生理的意義について,研究をまとめる予定である。昨年度に引き続き,論文発表にも力点をおく。
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