研究実績の概要 |
セイヨウナシ果実では,発育中に蓄積したデンプンが成熟中に分解する。この過程にはアミラーゼが関わっていると考えられているが,そのメカニズムはわかっていない。そこで本研究室では,昨年バートレット果実の樹上成熟区,追熟区,低温貯蔵区を設け,α-アミラーゼ遺伝子発現の解析を行った。今回はβ-アミラーゼに着目し,遺伝子発現の比較を試みた。 RNA-seqの実験で遺伝子発現がみられた31個のβ-アミラーゼ遺伝子の中で,発現量の高かったPCP000852,PCP002127,PCP003881,PCP004080,PCP007121,PCP026720,PCP026721の7つを選択し,リアルタイムPCRで解析した。 その結果,デンプン含量は,樹上成熟区ではほとんど変化しなかったのに対して,追熟区では8日目から大きく減少し,16日目には消失した。低温貯蔵区においても減少したが,16日目になっても完全には消失しなかった。β-アミラーゼ遺伝子の相対発現量は,追熟区でPCP000852とPCP007121がデンプン分解に伴って増加し,PCP003881がデンプン分解の開始する8日目に急激に増大した。低温区では,PCP007121の発現量がデンプン分解に伴って増加し,PCP002127とPCP004080が4日目に増大した。PCP026720とPCP026721はすべての試験区で発現がみられたが,大きな変化はなかった。 以上の結果から,デンプンは追熟中ならびに低温貯蔵中に分解するが,β-アミラーゼ遺伝子の発現は異なることが判明した。このことから,追熟中および低温貯蔵中におけるデンプン分解のメカニズムは異なることが示唆された。
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