研究課題
本研究は、果実生理研究のニューフロンティアと期待できる「低温遭遇によるエチレン非依存型成熟誘導機構」を焦点に、次世代シーケンサーによるゲノムワイド遺伝子解析、メタボローム解析、遺伝子組換え、yeast two-hybrid法を駆使する先駆的取り組みである。これまで、果実成熟制御については、植物ホルモンのエチレンを中心に検討され、「エチレン作用阻害剤と低温貯蔵が最も効果的な成熟制御技術」と考えられてきた。ところが、筆者らはキウイフルーツにおいて、病害によるエチレンの影響を除去すると「低温環境で室温下よりも成熟・軟化が早まる」という常識と全く逆の現象を発見した。さらに、RNAseq分析で、低温成熟誘導系はエチレン成熟誘導系と下流の一部遺伝子を共有するが、別個の制御系であることを示し、「低温がエチレン作用とは独立に果実成熟を誘導する」という新たな概念に到達した。この機構は、果実成熟の早晩性や貯蔵特性に密接に関与し、その解明は早生・晩生新品種の育種、長期貯蔵技術の開発に直結する。本年度は、レモンと低温感受性が異なるウンシュウミカン品種を材料として、クロロフィル、カロテノイド組成などの色素成分、炭水化物代謝の面から低温感受性とエチレン応答性を解析するとともに、RNAseq法を用いた網羅的遺伝子発現解析した。その結果、低温遭遇及びエチレン処理に明確に反応する色素代謝関連遺伝子とその制御に関わる転写因子をスクリーニングした。低温応答機構に関わる鍵因子候補として、ClERF3因子を抽出することに成功した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Post harvest Biology and Technology
巻: 158 ページ: 1-14
doi.org/10.1016/j.postharvbio.2019.110949
Frontiers in Plant Science
巻: 10 ページ: 1-15
doi: 10.3389/fpls.2019.00888