研究課題
以前の我々の研究で、全身獲得抵抗性誘導後にrgs-CaM機能が正反対に相変化してウイルス感染阻害に働くことは、タバコrgs-CaMをノックダウンした形 質転換タバコへのウイルス接種試験により見出した。本年度は、シロイヌナズナのrgs-CaMパラログCML-37、38 、39ノックアウト変異体おで同様の実験を行い、3つのパラログのどれが全身獲得抵抗性誘導前にウイルスおよ び灰色カビ病菌の感染を促進して、誘導後に(キュウリモザイクウイルスや他の)ウイルスと灰色カビ病菌の感染を阻害しているか検討した。結論するためには来年度も引き続き検討する必要があるが、これまでに灰色カビ病菌への全身獲得抵抗性誘導に、傷ストレスが有効であることを見出した。傷による全身獲得抵抗性誘導前後でノックアウト変異体が野生シロイヌナズナに比べて、灰色カビ病菌に対する感受性に違いが見られた。今後の検証のために、ノックアウト変異体間の交配により二重変異体を作製した。以前の研究で全身獲得抵抗性誘導後にrgs-CaMのウイルス防御機能機能、すなわち、ウイルスのRNAサイレンシング抑制タンパク質(RSS)に結合しオートファジーによる分解に導く機能が活性化することを見出している。本年度、さらに検証を進めた結果、形質転換タバコおよびBY2培養細胞内で35Sプロモーター下で恒常的に発現するRSS(HC-Proおよび2bタンパク質)は、BTH処理による全身獲得抵抗性誘導後にウイルス感染に伴うカルシウム流入を人工的に起こすことでより分解が促進されることを証明した。本年度はさらに、平成30年以降にトマトでrgs-CaMパラログの役 割・機能解析と新たな育種戦略の例証を行うための準備として、ゲノム編集技術CRIPSR/Cas9を用いてrgs-CaMパ ラログ遺伝子破壊株の作製を進めた。トマトに4つあるrgs-CaMパラログそれぞれの遺伝子破壊株の作出を来年度には完了できると思われる。
2: おおむね順調に進展している
本年度に計画した三つの課題のうち、二つについては目標を達成できた。来年度に持ち越しになった課題についても、これまでの検討で来年度に結論できると思われる基礎的なデータを得ることができた。さらに、その検討の中で、思いがけない発見として、傷ストレスが効果的に灰色カビ病菌に対する全身獲得抵抗性を誘導する可能性を見出すことができたから。
今後は、来年度に計画しているrgs-CaMパラログの機能解析を行うとともに、本年度に未達成の課題を完了すること。ゲノム編集によるrgs-CaMパラログのノックアウトトマトの作製を完了次第、それらのウイルスや灰色カビ病菌に対する感受性試験を開始する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 備考 (1件)
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