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2016 年度 実績報告書

キュウリモザイクウイルスサテライトRNAによるタバコ黄化誘導機構の全容解明

研究課題

研究課題/領域番号 16H04880
研究機関北海道大学

研究代表者

増田 税  北海道大学, 農学研究院, 教授 (60281854)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードサテライトRNA / サイレンシング / キュウリモザイクウイルス / 黄化
研究実績の概要

キュウリモザイクウイルス(CMV)のサテライトRNA(satRNA)はCMVに寄生して増殖する300~400塩基の短いnon-coding RNAである。satRNAは大抵の場合、CMVの病徴を軽減するが、我々が研究材料としたY-satRNA(Y-sat)はCMVに感染したタバコを鮮黄色に変化させる。Y-satの存在のみで、なぜ劇的な病徴の変化が生じるのか長年の謎であった。我々は数年前に、この黄化病徴の誘導の原因として、クロロフィルの合成酵素遺伝子(ChlI)が宿主のRNAサイレンシング(RS)によって分解されるためであることを明らかにしている。今年度は、RS経路の重要な因子の中から2本鎖RNA分解酵素であるDCL2とDCL4がY-satの黄化病徴誘導にどのように関わるのか解析するため、DCL2/DCL4のノックダウンタバコを作出した。Real-time RT-PCRによってそれらの発現が低下していることを確認した後、DCL2/4によって生成される21-ntと22-ntのsiRNAを解析した。siRNAをノーザンブロットで解析した結果、これらの蓄積が著しく減少しており、それとは対照的に24-ntのsiRNAが相補するように増加していた。この形質転換植物にY-satを接種したところ、予想に反してタバコが黄化したことから、ChlIに対するRSは24-nt siRNAによるものと考えられ、これまでArabidopsisの研究からわかっていた知見とは異なる新現象であることが判明した。もし、タバコで24-nt siRNAが21-ntや22-nt siRNAを相補するようにヒエラルキーができているのであれば、エピジェネティクス制御は、植物によってRS因子の役割が異なっていることを示唆するものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度得られた成果は、Y-satRNAによるタバコの黄化が、2本鎖RNA切断酵素であるDCL2とDCL4によって生成する21-nt 及び22-nt siRNAのみならず、DCL3によって生成する24-nt siRNAによっても、DCL2/4のノックダウン化で誘導されるという新知見である。これは当初の予想になかったことであるが、先行しているArabidopsisによる定説とは矛盾するものであり、植物によってRSの制御のしかたが異なっていることを示すおもしろい現象であると考えている。なお、DCL2とDCL4を認識する抗体を作成することにチャレンジしたが、in vitroで合成したタンパク質には反応するものの、植物から抽出したタンパク質では、明瞭なバンドが得られなかった。おそらく発現量が微量であり、ウエスタンによって検出することは難しいのかもしれない。

今後の研究の推進方策

次年度は、この新発見を踏まえて、DCL2/4のノックダウン下で生成する24-nt siRNAについてさらに解析する。Arabidopsisでは24-nt siRNAがmRNAを切断することができないことが定説になっているため、DCL2/4ノックダウンタバコで、ChlI mRNAが実際切断されるのか興味深い点であり、5’ RACE法によってこれを検証する。また、RS経路に重要なsecondary siRNA増幅システムの担い手であるRDR6をCMV H1ベクターによって発現抑制し、黄化への影響を観察する。H1ベクターは転写後サイレンシング(PTGS)を効率よく誘導できない性質があり、このベクターに組み込んだRDR6の配列をアンチセンスRNAとしてRDR6の発現をターゲットすることができる。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Interaction between Cucumber mosaic virus 2b protein and plant catalase induces a specific necrosis in association with proteasome activity2017

    • 著者名/発表者名
      Murota, K., Shimura, H., Takeshita, M. and Masuta, C.
    • 雑誌名

      Plant Cell Report

      巻: 36 ページ: 37-47

    • DOI

      10.1007/s00299-016-2055-2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Ascorbic acid accumulates as a defense response to Turnip mosaic virus in resistant Brassica rapa cultivars.2016

    • 著者名/発表者名
      ujiwara, A., Togawa, S., Hikawa, T., Matsuura, H., Masuta, C. and Inukai, T.
    • 雑誌名

      Journal of Experimental Botany

      巻: 67 ページ: 4391-4402

    • DOI

      10.1093/jxb/erw223

  • [雑誌論文] Aquaporin-mediated long-distance polyphosphate translocation directed towards the host in arbuscular mycorrhizal symbiosis: application of virus-induced gene silencing.2016

    • 著者名/発表者名
      Kikuchi, Y., Hijikata, N., Ohtomo, R., Handa, Y., Kawaguchi, M., Saito, K., Masuta, C., Ezawa, T.
    • 雑誌名

      New Phytologist

      巻: 211 ページ: 1202-1208

    • DOI

      10.1111/nph.14016

  • [雑誌論文] Chemical Promotion of Endogenous Amount of ABA in Arabidopsis thaliana by a Natural Product, Theobroxide.2016

    • 著者名/発表者名
      Yamashita, Y., Ota, M., Inoue, Y., Hasebe, Y., Okamoto, M., Inukai, T., Masuta, C., Sakihama, Y., Hasidoko, Y., Kojima, M., Sakakibara, H., Inage, Y., Takahashi, K., Yoshihara, T., and Matsuura H.
    • 雑誌名

      Plant Cell and Physiology

      巻: 57 ページ: 986-999

    • DOI

      10.1093/pcp/pcw037

  • [学会発表] Rhizophagus clarus-ウイルス間相互作用に駆動される酸性土壌適応:大陸間隔離株の共通ウイルスは酸性土壌において正の選択圧を受ける2016

    • 著者名/発表者名
      鈴木芽以、中西夏輝、丸山隼人、俵谷圭太郎、増田税、江沢辰広
    • 学会等名
      菌根研究会2016年大会
    • 発表場所
      千葉大学西千葉キャンパス(千葉県千葉市)
    • 年月日
      2016-12-10
  • [学会発表] キュウリモザイクウイルス2bタンパク質によるゲノムワイドなメチル化に関するin silico解析2016

    • 著者名/発表者名
      白川千里、外川靖子、犬飼剛、増田税
    • 学会等名
      日本植物病理学会北海道部会
    • 発表場所
      かでる2・7(北海道札幌市)
    • 年月日
      2016-10-19 – 2016-10-20
  • [学会発表] 茎頂培養によりウイルスフリー化した八紘ニンニクの収量・品質の変化2016

    • 著者名/発表者名
      両國香、志村華子、増田税
    • 学会等名
      日本植物病理学会北海道部会
    • 発表場所
      かでる2・7(北海道札幌市)
    • 年月日
      2016-10-19 – 2016-10-20
  • [学会発表] Cucumber mosaic virus感染後のトウガラシにおけるアスコルビン酸代謝関連遺伝子群のエピジェネティクス発現制御2016

    • 著者名/発表者名
      妙中駿之、古谷未咲、松村健、増田税
    • 学会等名
      日本植物病理学会北海道部会
    • 発表場所
      かでる2・7(北海道札幌市
    • 年月日
      2016-10-19 – 2016-10-20
  • [学会発表] ウイルス外被タンパク質遺伝子を欠失させたCMVベクターを用いたアグロインフェクション法2016

    • 著者名/発表者名
      福澤徳穂、佐藤敦子、増田税、松村健
    • 学会等名
      日本植物細胞分子生物学会
    • 発表場所
      信州大学繊維学部(長野県上田市)
    • 年月日
      2016-09-01 – 2016-09-03
  • [学会発表] Cucumber mosaic virus 2b protein alters the plant epigenomes2016

    • 著者名/発表者名
      Yasuko TOGAWA, Raku SAITO, Senri SHIRAKAWA, Chikara MASUTA
    • 学会等名
      The Plant Biotech 2016
    • 発表場所
      Queen's University in Kingston, ON, Canada
    • 年月日
      2016-06-19 – 2016-06-21

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公開日: 2018-01-16  

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