研究課題/領域番号 |
16H04882
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
海道 真典 京都大学, 農学研究科, 助教 (20314247)
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研究分担者 |
竹田 篤史 立命館大学, 生命科学部, 准教授 (60560779)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | RNAウイルス / 細胞間移行 / 移行タンパク質 / 複製複合体 / 宿主因子 / 原形質連絡 / リン酸化 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究において、申請者はRed clover necrotic mosaic virus(RCNMV)の細胞間移行に関与する宿主タンパク質を同定するために、移行タンパク質(movement protein, MP)と緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質を、宿主植物であるNicotiana benthamianaに一過的に多量に発現させ、抗GFP抗体ビーズを用いた共免疫沈降と質量分析を行った。その結果、多数の宿主因子候補タンパク質を同定することが出来た。現在これらのタンパク質がウイルスの細胞間移行に関与するか否かについて調査を進めている。 RCNMV MPの機能ドメイン解析研究では、N末端と中央領域付近のαヘリックス構造の欠失変異の導入によって、ウイルスの細胞間移行が著しく低下することが明らかとなった。これは変異MPがウイルス複製複合体と共局在が出来なくなることが原因であり、MPの機能そのもの(プラズモデスマータへの局在とこれを開く能力)には影響は見られないことがわかった。さらにこのαヘリックス領域のアミノ酸置換実験から、αヘリックス構造そのものではなく、これに含まれるセリンあるいはトレオニン残基がこのようなMPの性質に関与していることが明らかとなった。 二分節ゲノム構造をとるRCNMVの各RNAセグメントが個別に細胞間移行するという可能性について検証した実験では、RNA1の細胞間移行にはMPのC末端領域を介した複製複合体への局在が必要であるが、RNA2の場合はこのような過程を必要としないことがわかった。この結果はRNA2は翻訳と共役する形でMPと相互作用して隣接細胞へと輸送されることを示しており、各ゲノムRNAセグメントが異なる機構によって細胞間移行を行うという可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、NbGAPDH-C遺伝子がRCNMV増殖に及ぼす影響について詳細に解析する予定であったが、分節ゲノムの細胞間移行機構に関する研究を優先したためにまだ手つかずの状態である。これについては今年度行う予定である。MPの機能ドメイン解析ではβシート構造の解析も進展があり、やはりMPの細胞内局在に大きな影響が見られる変異体を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
多数のMPと相互作用する宿主タンパク質がRCNMV増殖に及ぼす影響の解析には、過剰発現系と発現抑制系の両方を試みる予定である。それらの植物葉に組換えRCNMVをチャレンジ接種することで評価する。また、MPの立体構造を決定するためのタンパク質発現および精製システムの開発に共同研究者が取り組んでおり、今年度中には精製タンパク質が移行機能を有するかどうかについて、マイクロインジェクション法を用いて調べる予定である。
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