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2019 年度 実績報告書

植物RNAウイルスの輸送ハブ形成過程と細胞間移行機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16H04882
研究機関京都大学

研究代表者

海道 真典  京都大学, 農学研究科, 助教 (20314247)

研究分担者 竹田 篤史  立命館大学, 生命科学部, 教授 (60560779)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2021-03-31
キーワードRNAウイルス / 移行タンパク質 / 複製複合体 / 宿主因子 / タンパク構造解析 / 二本鎖RNA
研究実績の概要

前年度までに申請者は、Red clover necrotic mosaic virus (RCNMV)の移行タンパク質(movement protein, MP)と相互作用する宿主タンパク質を多数同定しており、これらの中からストレス顆粒の構成因子であるANGUSTIFOLIA(AN)のRCNMV増殖への影響について調査した。その結果、AN過剰発現葉ではRCNMVの細胞間移行が顕著に阻害されることが分かった。ANはストレス顆粒に局在するが、同時にここにウイルス複製中間産物である二本鎖RNAが共局在することから、RCNMVの複製はストレス顆粒と関連しており、且つ細胞間移行と関連することが示唆されるデータを得た。
また、複製複合体の形成過程の解明に関して、二本鎖RNAの局在を指標として追跡し、経時的に細胞表層に形成される小斑点状構造が集合して巨大化する様子をタイムラプスイメージングで撮影することができた。また複製複合体形成に移行タンパク質は関与しないが、MP中のαヘリックス構造を欠損させると、MPのみならず複製複合体の凝集が阻害され、両者の共局在性が失われることが明らかとなった。この結果は2019年7月の国際学会(IS-MPMI)IS-MPMIで発表した。
さらに、RCNMVの構造解析のための大腸菌での発現条件を設定し、大量発現させることができた。これに宿主タンパク質GAPDH-Aを混ぜることで結晶化の条件を探索している。
最後に、RCNMVと同科のカーネーション斑紋ウイルス(CarMV)の全長cDNAクローンの作製に成功し、in vitro転写したウイルスRNAが親株と同等の感染性を持つことを確認した。またCarMV接種植物における二本鎖RNAの細胞内局在を共焦点顕微鏡観察で調べたところ、多数の球状構造を内包した巨大な塊を形成することが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

RCNMVの移行に関与する宿主因子の候補としてANを同定できた。これらの発現をRNAサイレンシングによって抑制した形質転換植物が複数ライン得られた。今後はこれらを用いてRCNMVの複製および移行への影響を詳細に調査する予定である。また昨年度までにMPとの共局在性が明らかとなったPKタンパク質については、サイレンシングによるウイルス増殖への影響が見られなかったが、これにさらに別のキナーゼ遺伝子をVIGS法によって抑制した場合に影響が見られないか、調査予定である。PKについても発現抑制形質転換植物が複数系統確立できており、早急に取りかかりたい。
複製複合体の形成過程については、二本鎖RNAとMPや複製酵素タンパク質との共局在も明らかとなり、また感染初期には二本鎖RNA局在が小胞体膜と重ならないことや、MP変異体が形成阻害することが明らかとなるなど、予想を超えて進展している。
カーネーション斑紋ウイルスのcDNA作製と感染性調査がほぼ終了できたことで、遺伝子操作系が確立された。
これらの結果から、総じて順調な進行状況にあると言える。

今後の研究の推進方策

RCNMV移行関連宿主因子に関しては、PKとANについてそれぞれ複数ラインのサイレンシング誘導植物が得られたので、これらを利用して接種実験を進める予定である。
複製複合体の形成過程の解明については、二本鎖RNAの局在が経時的に変化するということが明らかとなったが、これは以前Brome mosaic virusで報告された、複製複合体が核周縁部の小胞体膜を陥没させた多数の袋状構造で形成されるというモデルと大きく異なっている。この点について調べるためには電子顕微鏡を用いてRCNMVの二本鎖RNAが凝集する際にどのような膜構造の変化がもたらされるのか調べる必要がある。現在電子顕微鏡観察を行うべく準備を進めている。また、二本鎖RNAの凝集が複製複合体の形成ではなく、分解産物の凝集によるものではないか、という疑念に答えるべく、各種の分解系反応の阻害剤を用いて二本鎖RNAの凝集に変化が見られるか否かについて調査する予定である。
カーネーション斑紋ウイルスについては、移行タンパク質の細胞内局在に関する報告がこれまで全く無い。これについて、ウイルス複製との関連で調べることができるよう、組み換えウイルスを各種準備する予定である。一過的に発現させた移行タンパク質と蛍光タンパク質との融合タンパク質が、移行機能欠損ウイルスの移行をサポートできるようなシステムを構築し、これに続いて移行タンパク質への変異を導入し、変異体解析を行う予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Validating plant genes involved in pepper yellow leaf curl Indonesia virus infection using VIGS in model plant Nicotiana benthamiana2020

    • 著者名/発表者名
      Kusumawaty Kusumanegara, Masanori Kaido, Kazuyuki Mise
    • 雑誌名

      Journal AgroBiogen

      巻: 16 ページ: 7-16

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] シロイヌナズナのRLP23遺伝子は灰色かび病菌への抵抗性に関与している2020

    • 著者名/発表者名
      大野恵梨佳・小内清・加藤大明・海道真典・三瀬和之・寺内良平・高野義孝
    • 学会等名
      令和2年度 日本植物病理学会大会
  • [学会発表] 近縁炭疽病菌との比較解析によるウリ類炭疽病菌の宿主適応に関与する遺伝子の単離および解析2020

    • 著者名/発表者名
      小川泰生・井上喜博・Trinh Thi Phuong Vy・Pamela Gan・海道真典・三瀬和之・鳴坂義弘・白須賢・高野義孝
    • 学会等名
      令和2年度 日本植物病理学会大会
  • [学会発表] Subcellular dynamics of red clover necrotic mosaic virus (RCNMV) double-stranded RNAs in infected plant cells2019

    • 著者名/発表者名
      Takata, S., Mise, K., Takano, Y. and Kaido, M.
    • 学会等名
      IS-MPMI 2019
    • 国際学会
  • [学会発表] TFV1 is preferentially expressed in plant infection phase and is required for full virulence of Colletotrichum orbiculare on cucurbit plants2019

    • 著者名/発表者名
      Zhang, R., Inoue, Y. Kaido, M., Mise, K. and Takano, Y.
    • 学会等名
      IS-MPMI 2019
    • 国際学会
  • [学会発表] Genome-wide association study(GWAS)を用いたbrome mosaic virus(BMV)に対するイネ新規抵抗性遺伝子の探索2019

    • 著者名/発表者名
      島本果穂・清水元樹・寺石政義・海道真典・奥本裕・寺内良平・高野義孝・三瀬和之
    • 学会等名
      令和元年度 日本植物病理学会 関西部会
  • [学会発表] bak1-5 mutation uncouples tryptophan-dependent and independent postinvasive immune pathways triggered in Arabidopsis thaliana by multiple fungal pathogens2019

    • 著者名/発表者名
      Kosaka, A., Pastorczyk, M., Nishiuchi, T., Suemoto, H., Ishikawa, A., Kaido, M., Mise, K., Bednarek, P. and Takano, Y.
    • 学会等名
      令和元年度 日本植物病理学会 関西部会
  • [備考] 京都大学植物病理学研究室

    • URL

      http://www.plant-pathology.kais.kyoto-u.ac.jp/

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公開日: 2021-01-27  

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