ネズミムギ、オヒシバ、ヒメムカシヨモギ及びオオアレチノギクなどでグリホサートに対する抵抗性が国内で報告されている。静岡県西部では、畦畔の雑草管理にグリホサートが連続使用されており、ネズミムギが本剤に対して抵抗性を獲得している。ネズミムギはイネ科越年生雑草で、風媒他殖するため、抵抗性遺伝子の拡散は上述の3草種と比較して広範囲にわたると考えられる。他方、除草剤抵抗性のメカニズムは、作用点抵抗性と非作用点抵抗性に大別され、抵抗性メカニズムによって抵抗性の程度や多剤抵抗性の有無が異なるため、グリホサート抵抗性のメカニズムを明らかにすることは、グリホサート抵抗性雑草の防除計画策定に必須である。昨年度までに、ネズミムギの抵抗性は非作用点抵抗性である可能性が示唆されていたため、本年度は、とくに本種の非作用点抵抗性メカニズムの解明を試みた。 感受性及び抵抗性ネズミムギ個体に標準量のグリホサートを塗布処理し、4日後に植物体を処理葉、非処理茎葉部および根に分けた。LC-MS/MSを用いて各部位におけるグリホサート及びその代謝産物であるAMPAを定量した。その結果、抵抗性個体において処理葉から非処理茎葉部および根に移行するグリホサート量が有意に少ない傾向が認められた。また、抵抗性個体においても、グリホサートの代謝産物であるAMPAは認められなかった。 感受性及び抵抗性個体からRNAを抽出後、HiSeq4000にてシーケンスを行った。RNA-Seqにより感受性及び抵抗性個体間で発現遺伝子のプロファイルを比較した結果、発現量が有意に異なっていた2465遺伝子のうち2274遺伝子が抵抗性個体で高発現しており、うち4種類はABCトランスポーター遺伝子であった。 以上の結果から、静岡県西部のネズミムギのグリホサート抵抗性には、液胞隔離が関与している可能性が示唆された。
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