研究課題
ファイトプラズマ(Candidatus Phytoplasma属細菌)は昆虫媒介性の植物病原細菌であり、植物宿主と媒介昆虫との2つの宿主間を水平移動するホストスイッチングにより感染を拡大する。昆虫によって媒介される植物病原体は、地球温暖化とともにその感染範囲を拡大させており、こうした病気を防ぐことが近年の重要な課題となっている。本研究ではファイトプラズマが宿主を操作する分子メカニズムに焦点を当て、宿主の細胞機能を制御するホストマニピュレータータンパク質の機能を解析する。ファイトプラズマは植物・昆虫の細胞内に寄生するため、ファイトプラズマから分泌されたタンパク質は宿主の細胞質で直接的に機能する。分泌シグナルを持つタンパク質は宿主を操作するホストマニピュレーターの最有力候補であるため、ファイトプラズマゲノム上にコードされる分泌タンパク質を探索し、その機能を解析する。令和元年度は、花器官形成に関わるMADSドメイン転写因子に結合し、分解を誘導して花器官の葉化を引き起こすPHYL1タンパク質の立体構造解明を試みた。大腸菌で発現させたPHYL1を精製し、蒸気拡散法により結晶を得た。X線結晶構造解析の結果、PHYL1はループで繋がれた2つの両親媒性αヘリックスからなるcoiled-coil構造を有することが明らかとなった。各αヘリックスに2つのアラニンを挿入した変異体を作出し、機能を解析したところ、いずれのαヘリックス変異体もMADSドメイン転写因子への結合能を喪失していた。また、MADSドメイン転写因子SEP3と各変異体を植物細胞内で共発現させたところ、いずれのαヘリックス変異体もSEP3分解能を示さなかった。以上より、2つのαヘリックスがPHYL1の機能に重要であることが示唆された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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