研究課題/領域番号 |
16H04887
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
奥田 充 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 上級研究員 (50355640)
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研究分担者 |
竹下 稔 宮崎大学, 農学部, 教授 (00304767)
増中 章 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 主任研究員 (80466010)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 植物ウイルス / 経卵伝染 / 定量解析 |
研究実績の概要 |
羽化直後の無保毒ヒメトビウンカ成虫をRSV感染コムギ上で飼育し、獲得開始後20日まで経時的に体内ウイルス濃度を解析したところ、個体により相対濃度に大きく差が見られたが、飼育日数に従い対数的に上昇し、RSVの相対量は1000倍以上に増加した。最も高い相対濃度を示した個体は経卵伝染した成虫とほぼ同じであった。獲得開始から8日目以前は全ての個体が経卵伝染個体のウイルス濃度より低かったが、10日目以降では14~30%が経卵伝染個体と同程度となった。健全ヒメトビウンカ幼虫(孵化約7日)をRSV感染コムギ上で飼育し、同様の試験を行ったところ、成虫の場合と同様に体内ウイルス濃度が飼育日数に従い対数的に上昇した。 また、RSV抵抗性遺伝子(Stv-bi、stvaおよびstvb)を持つコシヒカリ同質系統を餌として発育したRSV経卵伝染ヒメトビウンカ個体群の保毒虫率を調べたところ、感受性であるコシヒカリと保毒虫率に有意差は認められず、抵抗性遺伝子の有無は保毒虫率に直接影響しないことが示された。さらに、コシヒカリ、あさひの夢、コムギ(農林61号)を用いて4世代に渡り保毒虫率の推移を調べたところ、1世代あたりの経卵伝染率は世代間でばらつきが認められるもののこれらの間で経卵伝染率に差は認められなかった。これらのことから、抵抗性品種による保毒虫率の低下は、発病株の減少により新たにRSVを獲得する個体が減少することや、経卵伝染率が100%でないことによる自然減が要因であり、抵抗性品種が直接的に保毒虫率を引き下げているわけではないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異なる宿主上で発育したヒメトビウンカ体内における増殖と経卵伝搬率の解析については、イネ縞葉枯ウイルス検出薬の問題により遅れていたが、予定どおりH29年度中に終了することが出来た。RNAi 型ウイルス抵抗性イネを用いた試験については、種子増殖に成功しており、試験に供試できる予定であり、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
RSV獲得後の日数が経卵伝搬率に与える影響の解析については、これまでに確立した手法を用いて、羽化直後の成虫をRSV感染イネ上で獲得吸汁させ、獲得開始10日後および20日後の経卵伝染率および次世代虫の体内RSV濃度を計測する。また、幼虫期にRSVを獲得した場合の経卵伝搬率を解析し、成虫獲得の場合と比較する。 抵抗性誘導剤によるイネにおけるRSV増殖への影響の解析については、2017年に引き続き、 アシベンゾラルSメチル(ASM)を処理したイネにおける誘導抵抗性関連遺伝子の発現を解析する。また、ASM等を処理したイネにRSVを保毒したヒメトビウンカを放飼し、RSVの感染率と植物体におけるRSV増殖への影響をリアルタイムPCRにより解析する。 RNAi型ウイルス抵抗性イネによる昆虫体内RNAiの誘導の解析については、供試する組換えイネ系統の種子増殖に成功しており、これを用いてRSV保毒ヒメトビウンカを飼育し、体内のRSV濃度をリアルタイムPCRにより解析する。また、その次世代虫を継続してRNAi型ウイルス抵抗性イネ上で発育させ、体内のRSV濃度を解析する。
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