研究実績の概要 |
ヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)により媒介されるイネ縞葉枯ウイルス(rice stripe tenuivirus, RSV)について、RSV感染イネ組織中のRSV濃度を解析し、病徴とウイルス蓄積との関連を明らかにすることを目的とした。RSV保毒ヒメトビウンカを用いてRSVを接種したイネ(品種:コシヒカリ)から接種7、14、21、28日後に採取した第1葉葉鞘先端部および各葉身の中央部からISOGEN IIを用いてRNAを抽出し、RSVの外被タンパク質遺伝子(CP)領域のRNAを標的とし、アクチン遺伝子または伸長因子(EF)1a遺伝子を内在コントロールとしてリアルタイムRT-PCRによりRSVの相対定量を行った。また、鷲尾ら(1967)の発病程度の分類に準じたイネの病徴(病徴型)と植物体中のRSV濃度を比較した。その結果、第一葉鞘部を含む茎部(茎部)及び最上位葉におけるRSV濃度は、接種後日数に応じて高くなる傾向が認められた。同一個体における茎部と最上位葉のRSV濃度は高い相関を示した。病徴型とRSV濃度の関係では、病徴型A, Bおよび Btを示すイネの茎部及び最上位葉はRSV濃度が高く、各病徴間のRSV濃度に統計的有意差は見られなかった。病徴型CとCrは個体間のばらつきが大きかった。病徴型DはRSV濃度がA, B, Btと比べて有意に低かった。これらのことから、RSVに感染したイネの病徴型とウイルス濃度の関係に基づき病徴程度を簡易に算出できる新たな発病指数(SDI)の算出式を考案した。SDIは、鷲尾らが提案した発病指数と高い相関を示すが、病徴の識別が容易であり、より簡易に算出できる。
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