土壌中に生存する植物寄生性センチュウは作物の根等に寄生し生活し、甚大な被害を引き起こす重要微小害虫である。近年、病原体を直接殺さずに植物免疫を活性化することで防除を発揮する抵抗性誘導物質が着目されている。糸状菌やウイルスなどの病原体に対する抵抗性誘導物質についてはサリチル酸などをはじめその実体や作用機構も含めよく研究されているが、センチュウに対する抵抗性誘導物質に関する情報は限られている。本研究では、先行研究により見出したサツマイモネコブセンチュウ(以下、センチュウと略記)抵抗性誘導物質候補であるフィトール等葉緑体関連代謝産物の上流・下流で機能する植物因子の同定・機能解析等を通じて作用機構を解明し、当該物質のセンチュウ抵抗性に果たす役割を解明するとともに、シロイヌナズナ根へのスクラレール処理に伴う地上部でのクロロフィル分解に関わる未知シグナル物質を探索することを目的として研究を行う。平成30年度は、昨年度までに見出した、クロロフィル分解に関わるシグナル物質の探索を引き続き行った。具体的には、本報告者らによる先行研究においてセンチュウ抵抗性を誘導するスクラレオール(ジテルペノイドの一種)を処理したシロイヌナズナの地上部(主に葉)ではクロロフィル分解を伴う壊死が起こることを見い出し、本知見を踏まえ、スクラレオール処理シロイヌナズナからクロロフィル分解を指標とする植物成分の精製を進めた。活性成分は単一の物質ではなく、複数の物質であり、構造解析の結果から、これらはstigmasterolやcampesterol等のphytosterol類であることが判明した。
|