1)長期水田利用によるSOC蓄積機構の解析:前年度、団粒分画後のCO2生成速度が分画前の生成速度を大きく上回ったことから、団粒画分を混合培養し、未分画土壌とCO2生成速度を比較した結果、団粒間の相互作用がSOCの安定性に寄与していることが明らかとなった。また、水田利用年数の異なる土壌団粒画分について13C NMR分析と比重分画を行い、利用年数が長いほど各画分のアルキルC含有率が高く、O-アルキルC含有率が低いこと、結合型SOCの蓄積量が大きいことを明らかにした。 2)厩肥由来SOCの安定化の解析:連用開始時の土壌、連用26年目の慣行区および厩肥区土壌から比重分画で得られた4画分に対し、熱的支援加水分解およびメチル化GC/MS分析を行い、脂肪族化合物73種、芳香族化合物49種、含窒素化合物18種を同定した。0年目と26年目、施用量の違いによる各画分の成分組成の差は小さく、厩肥連用がSOCの化学構造を有意に変化させなかったことが確認された。 3)土壌中におけるバイオ炭Cの変化:新たにバイオ炭施用後7年目の畑圃場3処理区と無添加区から作土を採取し、遊離型炭化物を分離定量した。炭化物の収量は施用量の63~128%と処理区間の差が大きかったが、全Cに占める割合は類似していたことから、施用時に偏りがあったと推察した。また、ベンゼンポリカルボン酸法を用いて全バイオ炭C量を推定したが、2区において適当な値が得られず、現在も原因を検討中である。 4)火山灰の触媒作用による黒色腐植物質の生成:黒色度の低いRp型フミン酸と火山灰を40~60oCで最大36ヶ月間混合培養した。その間、フミン酸は添加量の30%まで減少し、黒色度はA型には届かなかったが、50oCと60oCでB型まで上昇した。60oCにおいては黒色フミン酸の特徴である芳香族C含量、縮合芳香環含量(酸化ルテニウム酸化分解法)の増大も確認された。
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