研究課題/領域番号 |
16H04892
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
矢内 純太 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (00273491)
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研究分担者 |
眞家 永光 北里大学, 獣医学部, 講師 (00453514)
前島 勇治 国立研究開発法人農業環境技術研究所, 土壌環境研究領域, 主任研究員 (80391209)
武田 晃 公益財団法人環境科学技術研究所, 環境影響研究部, 副主任研究員 (10715501)
中尾 淳 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (80624064)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 土壌 / 植物必須元素 / 可給態 / 化学形態 / 規定要因 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本の農耕地土壌における植物必須元素(14元素)の可給態量を多点数の同一土壌試料に対して網羅的に評価し、その規定要因を機構論的に解析することにより、植物必須元素の化学的挙動の包括的理解と、水田管理(酸化還元)や火山灰の影響(非晶質粘土鉱物)の強い日本の土壌の特殊性の解明を目指す。具体的には、日本全国から採取した多様かつ多点数の農耕地土壌に対して、1) 植物必須元素の可給態量を網羅的に定量し、2) 同一土壌の粘土鉱物や有機物を含めた各種理化学性を評価するとともに、3) 必須元素可給態量を目的変数に、各種理化学性を説明変数に用いた重回帰分析と、機構論的理解に基づいた要因制御実験を組合せ、各元素の可給態量の規定要因の解明と元素間の挙動の相同性評価を行う。 2017年度は、植物必須元素の形態別定量のうち、P・Ca・Mg・Moの定量を行った。すなわち、風乾後に2mm以下に篩別した土壌試料を用いて、PについてはBray No2準法による抽出・定量を、Ca・Mgについては1 mol/L酢酸アンモニウムによる抽出と原子吸光分析法による定量を、Moについては酸性シュウ酸アンモニウム溶液による抽出と比色法による定量を行った。加えて、一部の試料を用いて、土壌中のClの形態別定量法の確立を試みた。 加えて、風化が進んだ赤黄色土を中心に、アニオン吸着に関与すると考えられるFe酸化物(ヘマタイト・ゲータイト)を、示差XRD法と分光測定法を組合せて定量し、それらの関係解析を昨年度に引き続き行った。さらに、昨年度より多点数の有機物の構造特性を、アルカリ可溶性腐植の三次元蛍光スペクトルを蛍光分光光度計を用いて測定し、得られたスペクトルに対し、PARAFACモデルを用いた統計解析を行い、蛍光成分の分離定量を行うことで、元素吸着に強い影響力を及ぼす腐植の組成の違いを感度良く検出評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は、かなり多岐にわたる項目が計画されていたが、おおむね順調に研究を進展することができた。
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今後の研究の推進方策 |
植物必須元素の形態別定量のうち、P・Ca・Mg・Moの定量を引き続き行う。すなわち、風乾後に2mm以下に篩別した土壌試料を用いて、PについてはBray No2準法による抽出・定量を、Ca・Mgについては1 mol/L酢酸アンモニウムによる抽出と原子吸光分析法による定量を、Moについては酸性シュウ酸アンモニウム溶液による抽出と比色法による定量を行う。加えて、より多くの試料を用いて、土壌中のClの形態別定量法の精緻化を試みる。 土壌の各種理化学性の網羅的定量として、XRDで半定量的に求められたカオリナイト・ギブサイト・クロライトの定量を、引き続き示差熱分析装置により行う。また、土壌有機物のフルボ酸・腐植酸・ヒューミンの各濃度を定量するとともに、有機物の構造特性を、アルカリ可溶性腐植の三次元蛍光スペクトルを蛍光分光光度計を用いて測定する。得られたスペクトルに対し、PARAFACモデルを用いた統計解析を行い、蛍光成分の分離定量を行うことで、元素吸着に強い影響力を及ぼす腐植の組成の違いを感度良く検出評価する。ここで、抽出操作が煩雑であり試料数も多いため、未分析30試料について分析を行う。さらに、アニオン吸着に強く関与すると考えられるFe酸化物(ヘマタイト・ゲータイト)を、示差XRD法と分光測色法を組合わせることにより定量する。こちらは、風化の進んだ代表的試料にとどまらず、幅広い特性を持った試料に対象を広げる。
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