研究課題/領域番号 |
16H04893
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吹谷 智 北海道大学, 農学研究院, 講師 (10370157)
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研究分担者 |
小椋 義俊 九州大学, 医学研究院, 准教授 (40363585)
園山 慶 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (90241364)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ビフィズス菌 / 腸内活動 / INSeq法 / R-IVET / 応用微生物 / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
1. ヒト由来ビフィズス菌のマウス腸内定着系の確立:各種糖類を炭水化物源とした培地を用いて,ヒト由来ビフィズス菌Bifidobacterium longum 105-A株の生育を評価し,105-A株の増殖に有効な糖類を選抜した.次にAIN-93Gを基準食として,選抜された糖類を3%含む試験食を作成し,これらをBalb/cマウスに摂食させた.薬剤耐性の105-A株を投与し,糞便中の投与株の生菌数を経時的に測定した.その結果,基準食摂食群では投与後2日で糞便中の投与株は消失したのに対して,試験食摂取群では,投与後4~4.5日まで投与株が糞便中から検出された.この結果から,糖質の添加が105-A株の定着に有効であることが示唆された. 2. R-IVET法による腸管特異的に発現する遺伝子の選抜:Cre発現ベクターを用いたビフィズス菌ゲノムライブラリーを通常飼育したマウスに投与し,R-IVET法により腸管特異的に発現する遺伝子の同定を試みた.結果として,候補株が24株得られ,これらの単独での培養およびマウスへの投与試験を行い,染色体上の薬剤耐性遺伝子の脱落率を評価した.しかし両試験ともに高い脱落率を示す株が多く存在したことから,選抜された遺伝子の腸内特異的な発現を異なる方法で検証する必要があると考えられた. 3. INSeq法に用いるトランスポゾン変異株集団の構築:転移因子Himar1C9を用いたトランスポゾン変異導入法を用いて,約11,000株からなるトランスポゾン変異株集団を構築した.抽出効率の高いDNA抽出法を確立し,これらの変異株集団からDNAを抽出した.さらに,NGSデータから変異部位を同定し,各変異株の相対数を計測するデータ解析手法も確立した.結果として,11,000株の変異株集団でゲノム上の遺伝子の約67%に相当する1,305遺伝子に変異が導入されていることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は上記の3つの研究を進めた.1.については,ヒト由来ビフィズス菌のマウス腸内への定着を促進させると考えられるオリゴ糖の候補を同定することが出来た.2.については,候補遺伝子の選抜が出来たものの,その検証手法については検討の余地が残った.3.については,予定していた変異株数である13,000株に迫る11,000株からなる変異株集団を構築することが出来た.また,INSeq解析に必要な実験およびデータ解析の手法を確立し,INSeq解析が可能になった.このように研究実施計画に記載した内容とほぼ同等の実験が遂行でき,データも得られていることから,本年度の達成度はおおむね順調に推移していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
1. ヒト由来ビフィズス菌のマウス腸内定着系の確立:昨年度行った培養試験で同定された糖質を用いた食餌を調製し,マウスへの摂食・105-A株の投与試験を継続して行う.マウスの系統,週齢,添加する糖の濃度,菌の投与回数などを検討し,105-A株が腸内で定着可能なマウス飼育試験系を確立する. 2. R-IVET法による腸管特異的に発現する遺伝子の同定:昨年度は通常食摂取マウスを用いた投与試験により候補遺伝子を選抜した.その場合,投与したビフィズス菌の腸管での生存は一過的であるため,今年度はまず1.の試験系の確立を優先し,確立後に昨年度と同様の試験を行い,R-IVET法による腸管特異的に発現する遺伝子の選抜を行う.また,候補遺伝子の特異的な発現の検証方法として,定量RT-PCR解析の導入を検討する. 3.トランスポゾン変異株集団の構築とINSeq法による遺伝子同定:現在構築を進めている約14,000株のトランスポゾン変異株ライブラリーについて,INSeq解析を行い,変異部位を同定し,変異株集団の構成を評価する.その結果に応じてさらに変異導入試験を行い,生育必須遺伝子を除く約80%の遺伝子に変異が導入されたライブラリーを構築する.得られた変異株ライブラリーについて,栄養培地および最少培地での培養条件および無菌マウスへの投与条件においてINSeq解析を行い,各条件下で菌数が減少した変異株を同定し,各条件下における生育に寄与する遺伝子を同定する.
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