研究課題/領域番号 |
16H04897
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
吉田 信行 静岡大学, 工学部, 准教授 (10273848)
|
研究分担者 |
新谷 政己 静岡大学, 工学部, 准教授 (20572647)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | oligotroph / Rhodococcus erythropolis / aldehyde dehydrogenase / comparative genomics / bioethanol |
研究実績の概要 |
1.低栄養性に関するRhodococcus属細菌の比較ゲノム解析 Rhocococcus erythropolis N9T-4株は無機塩固体培地(BM培地)で良好な生育を示す超低栄養性細菌である.今回,N9T-4株以外の8種のRhodococcus属細菌のBM培地における生育を調べ,比較ゲノム解析によりN9T-4株の低栄養性を考察することを試みた.試験した8株のうち,3株(R. erythropolis C株,R. erythropolis PR4株はBM培地上で比較的良好な生育を示したが,その他の株の生育は極めて悪いものであった.N9T-4株の低栄養生育に必須なaldA遺伝子とその上流領域を比較したところ,興味深いことに低栄養生育を示した株のそれぞれの領域はN9T-4株のものと96%以上の相同性を示したが,その他の株のものとは上流領域で68%程度,aldA遺伝子で88%の相同性しか示さなかった.N9T-4株のaldAとその上流領域をRhodococcus用ベクタ―に導入し,低栄養生育能の低いR. jostii RHA1株を形質転換したところ,N9T-4株と同レベルの低栄養性を示した.このことはaldA遺伝子とその上流領域(調節領域)が低栄養生育に重要であることを示すと同時に,aldA遺伝子によって他の株に低栄養性付与できるという重要な知見である.
2.N9T-4株を微生物バイオマスとしたバイオエタノール生産の試み N9T-4株の細胞あるいはその抽出物を基質に,酵母によってアルコールを発酵させることを目的として,本年度はN9T-4株の液体培地での効率的な培養法を確立し,大量のバイオマスを得ることを目的とした.スポンジを支持体とした半固体培養系を構築し,寒天を支持体とした固体培地に比べ,約3倍の菌体を得ることに成功した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.低栄養性に関するRhodococcus属細菌の比較ゲノム解析 aldA遺伝子が低栄養生育に重要であることはこれまでに明らかとなっていたが,今回の比較ゲノム解析によって再確認できたが,aldA遺伝子とその上流領域を他の株に導入して低栄養性を付与できたことは特筆すべき成果である.比較ゲノム解析については,計画以上の成果を得ることができたと考えている.
2.N9T-4株を微生物バイオマスとしたバイオエタノール生産の試み N9T-4株は固体培地で良好に生育するが,液体培養の効率が悪いことが問題となっていた.今回,スポンジを支持体とする培養系を構築することにより,ある程度の生育の向上が見られた.
|
今後の研究の推進方策 |
1.低栄養性に関するRhodococcus属細菌の比較ゲノム解析 aldAとその上流領域どちらが低栄養生育に重要かを検討する必要があり,現在検討中である.上流領域とルシフェラーゼ遺伝子を連結させたレポータ系を構築し,上流領域の解析も行いたいと考えている.
2.N9T-4株を微生物バイオマスとしたバイオエタノール生産の試み もう少し培養条件を検討し,さらなる培養の効率化を目指し,来年度菌体を用いたバイオ燃料生産系を構築する.
|