研究課題
長寿変異株の取得に成功しこの株をSSG1-1 (spontaneous suppression of growth-delay in sah1-1)変異株と命名した。SSG1-1変異株では、SAMおよびSAHの高蓄積が観察された。野生株において SAM合成酵素を過剰発現させたところ、コントロールと比較して約1.6倍の寿命延長効果が観察された。培地中にSAMを加え野生株にSAMを高蓄積させても寿命延長効果が観察されなかったことから、SAMを細胞内で過剰に生合成させることが寿命延長に重要であった。SSG1-1変異株では、SAM合成に関与するメチオニン代謝経路の遺伝子群やグルコース代謝に関与する遺伝子群も高発現しており、カロリー制限で誘導される遺伝子との重複も観察された。実際、カロリー制限(2%グルコースから0.5%グルコース濃度の培地にシフト)を行ったSSG1-1変異株の寿命は、カロリー制限した野生株の寿命と同程度となったことから、SSG1-1変異はカロリー制限を模倣することが示唆された。さらに、SSG1-1変異株はSAM合成が促進されているため、メチオニンとATPが消費され、酵母AMPKであるSnf1の高活性が観察された。SAM合成酵素過剰発現株においてもSnf1が活性化され、SSG1-1変異株の寿命延長にはSnf1が重要であった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画にあった、作業仮説「S-アデノシルメチオニン高蓄積は、ATPおよびMet消費を促すことによりカロリー制限を模倣し、長寿を誘導する」について、その分子機構を明らかにすることができた。つまり、ATPの消費は、AMPKの活性化を誘導し、長寿となることを示した。本成果は米国科学アカデミー紀要に掲載された。
今後は、以下の計画に従って同時に解析を実施する。(1) SSG1変異株における寿命延長機構、(2) S-アデノシルメチオニン動態と生理的役割、(3) ケミカルバイオロジー的手法を用いたメチオニン代謝特異的に作用する生理活性物質の取得とその作用機構、(4) 普遍性の検証。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Appl. Microbiol. Biotechnol.
巻: 101 ページ: 1351-1357
10.1007/s00253-017-8098-7.
J. Biosci. Bioeng.
巻: 123 ページ: 8-14
10.1016/j.jbiosc.2016.07.007.
Biosci Biotechnol Biochem.
巻: 80 ページ: 1657-1662
10.1080/09168451.2016.1184963.
Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 113 ページ: 11913-11918
10.1073/pnas.1604047113
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/36035