研究課題
メチオニン代謝(S-アデノシルメチオニン)による寿命制御機構の解明を行う。申請者が既に取得したメチオニン代謝が変化することにより長寿となった酵母(SSG1変異株)を用いて、本年度は、以下の点について解析を進めた。(1) SSG1変異株における寿命延長機構、(2) S-アデノシルメチオニン動態と生理的役割。以上の計画を遂行するため、分子生物学・生化学的手法ならびにマイクロアレイ、プロテオーム、メタボローム解析などオミックス解析を用いて、メチオニン代謝が関わる寿命制御メカニズムを多方面から解析する。長寿遺伝子SSG1の遺伝子クローニングの結果、原因遺伝子はYHR032Wであった。YHR032Wは薬剤排出トランスポーターMATEファミリーに属する。データベース検索の結果、実験室酵母Yhr032Wタンパク質は実用酵母(清酒酵母など)と比較して36個アミノ酸が短いことが分かった。驚いたことに、取得したSSG1は変異により実用酵母のものと同一となり、36個アミノ酸が付加されており先祖帰りしたような変異株であることが分かった。SSG1は優性変異であったことから、sah1変異の抑圧には本変異が必須であったと考えている。実験室酵母Yhr032Wは明確な局在が観察されなかったが、Ssg1は液胞膜に局在することが分かった。そこで、Ssg1と実験室酵母Yhr032Wの両方を比較しながら、S-アデノシルメチオニンのトランスポーターとして機能を有するのか検討するため、液胞膜を精製し、トランスポーター活性測定を行った。その結果、SSG1はSAM及びSAHの液胞への輸送に関与することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
計画では、SSG1の輸送活性測定のための液胞膜分画実験の確立および活性測定を第一の目標としており、実施することが出来た。従って、当初の計画通りに進んでいる。
今後はメチオニン構造アナログであるエチオニンを使ってSSG1が液胞へ輸送する活性を有するか検討する。また、SSG1の寿命延長に重要なメチル基転移酵素を同定する。
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