寿命研究は、生物学的老化の仕組みを明らかにするのみならず、ヒトの老化を理解し、“健康寿命”の延長を実現するうえで極めて重要な課題である。老化過程は非常に複雑なプロセスと考えられているが、その謎が遺伝子レベルで理解されつつある。 本研究では、メチオニン代謝(S-アデノシルメチオニン)による寿命制御機構の解明を目的とした。研究代表者が既に取得したメチオニン代謝が変化することにより長寿となった酵母(SSG1変異株)を用いて、その詳細なメカニズム解析を実施した。昨年度は、SSG1の長寿に関わるメチル化の基質を同定するため、メチル基転移酵素に注目した。酵母では、メチル基転移酵素は70種類くらい存在しており、それら全てについて破壊株を作成した。12種類のメチル基転移酵素がSsg1と遺伝学的相互作用が認められた。それらの中から、2つ選抜し解析したところ、それらが実際、Ssg1が関わる寿命延長に重要な役割を果たすことを見出したため、論文執筆中である。さらに、Ssg1そのものの機能にも着目し、その機能解析を行った。Ssg1は液胞膜に局在し、メチオニン代謝産物の輸送に関与することが強く示唆された。さらに、Ssg1は他の輸送体と協調してメチオニン代謝産物の輸送に関与することが示唆された。現在、その詳細をさらに解析を行っている。また、清酒酵母の特徴として、メチオニン代謝産物の高蓄積が指摘されているが、このメカニズムとそのエタノール発酵への影響も調べた。
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