研究実績の概要 |
リン還元経路の探索については、昨年度の研究を継続し、Saccharothrix 属細菌のPepMをプローブとしてイリノイ大学放線菌のゲノムデータベースに対してtblastn検索を行い、E-value <e-150のスコアを示すPepMを有する株を11株取得した。31P-NMRおよびMS解析により、このうち5株において、ホスホン酸中で特徴的な骨格を有するphosphonothrixinと類似した3価のリンの生産が認められ、実際にリン還元を行っていることが確認された。またpepMクラスターの解析により既知の還元ステップとは異なる反応系が存在することが示唆されたため、コスミドライブラリーを作製し、遺伝子クラスターの解析を行った。その結果、ホスホン酸生成におけるリンの還元に関わる新規初期反応の存在が示唆された。 リンの酸化経路については、水圏微生物である藍藻について、ゲノムデータベースから亜リン酸デヒドロゲナーゼ(ptxD)遺伝子を保持するものを探索し、Anabaena sp. PCC 7120, Trichodesmium erythraeum IMS101, Cyanothece sp. ATCC 51142に相同遺伝子を見出した。これらのバクテリアのptxDをクローニングし、亜リン酸を利用できないSynechococcus elongatus PCC 7942への導入および大腸菌における組換えタンパク質発現を行った。その結果、いずれの遺伝子を用いた場合でもPCC 7942株は亜リン酸を唯一のリン源とした培地で増殖を示し、これらのptxDは機能的であることが確認された。また、組換えタンパク質を用いた酵素学的解析により、うち2種類の酵素学的パラメーターを決定した。その結果、藍藻のPtxDは従属栄養細菌とは異なる補酵素(NAD/NADP)依存性を示すことが明らかとなった。
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