研究課題
ヒトの腸管内には多種多様な腸内細菌が棲息しており(この集団を腸内細菌叢と呼ぶ)、それらが宿主腸管細胞と密接に相互作用することで、複雑な腸内微生物社会が形成されている。メタゲノム解析やメタボローム解析などの近年のオミクス解析技術により、腸内細菌叢由来代謝物質が、宿主の腸管のみならず全身の恒常性維持や疾患発症に大きく関与することが明らかとなりつつある。しかし、この複雑で洗練された腸内微生物社会がどのようなメカニズムで形成・維持されているのかの詳細については不明な点が数多く残されている。そこで本研究では、大腸菌をモデル細菌として用い、無菌マウスや次世代シーケンサー、質量分析計といったツールを駆使することで、腸内細菌が有する腸管内への定着因子の探索を行う。本年度は無菌マウスに大腸菌ミューテーター株を定着させたノトバイオートマウスを作製し、定着後0, 2, 4, 8 ,12週後にマウス糞便を採取した。便中に含まれる大腸菌ミューテーター株のゲノムDNAを酵素処理により抽出し、メタゲノム解析を行うことで腸管内への定着に有利な大腸菌遺伝子変異を網羅的に探索した。その結果、異なるノトバイオートマウス個体由来の大腸菌ミューテーター株ゲノムDNAにおいて、複数の共通した遺伝子変異が認められた。今後は検出された大腸菌ゲノムDNAの遺伝子変異について個々に変異株を作製し、腸管内への定着におけるその機能について詳細な解析を実施する。
2: おおむね順調に進展している
本年度は研究計画書のスケジュール通り、大腸菌ミューテーター株定着ノトバイオートマウスのメタゲノム解析より得られたデータから、腸内定着に重要な因子の特定を行った。
今後は、特定した腸内環境定着因子がもたらす分子機構の解明を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 7件) 産業財産権 (1件)
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