研究課題
本研究を通じて転写装置の特にコアポリメラーゼの新規機能を解析してきたが、異なる目標から出発した2つの研究が、最終的にプロモーターの認識嗜好性に、シグマ因子ではなくコア酵素が重要な働きをしているという新しい知見に集約された点が最大の成果である。第1の研究は、緊縮応答の解析において、アラーモン(p)ppGppの合成能を欠失させた株のアミノ酸飢餓時における増殖能を回復させたRNAPコア酵素の抑圧変異が転写開始点ヌクレオチドA/Gの認識嗜好性を変化させたという結果である。この研究は、生育回復効果がメチオニン(Met)の添加によって打ち消されるという不可思議な現象に直面し、この謎を解明すべく取り組んだところ、Metの代謝産物であるS-Adenosyl Methionine(SAM)がGTP生合成経路の酵素GuaBのCBS domainに結合してGTP生合成を活性化させたために、アミノ酸飢餓への適応性を阻害したことが明らかになった。この結果は、緊縮応答だけに留まらず、GTPレベルの量的制御という機構が、さまざま環境変化への適応に必須であることを再認識させることとなり、そこに新たにMet代謝が関与しているという、細菌におけるグローバルなヌクレオチド制御機構を明らかにすることに繋がった。第2の研究は、枯草菌における異種遺伝子発現の複雑な転写制御系解析の中で、特に大腸菌シグマAによって認識されるが、同じコンセンサス配列を持ちながら枯草菌シグマAには認識されないlacUV5プロモーターを対象とし、枯草菌RNAポリメラーゼ変異株を探索した結果、コア酵素の変異によって認識できるようになった株を取得した結果である。この変異はコア酵素のDNA認識部位の近傍にあり、プロモーター認識能に変化を与えた可能性がある。これらの結果より、コアのプロモーター認識機構という新たな制御系を見出した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件)
Mol Microbiol.
巻: 113 ページ: 1155-1169
10.1111/mmi.14484.