研究課題
人知を超えた構造と強い生理活性から天然化合物は創薬シード探索源として重要である。近年、微生物のゲノム解読が進展し、様々な二次代謝産物の生合成遺伝子クラスターが見出されているが、これらに含まれるユニークな遺伝子の機能を最大限に活用し創薬シード化合物を生産することがポストゲノム時代の重要課題である。我々は、骨関連疾患治療薬として注目されているリベロマイシンA (RM-A) 生産菌の全ゲノム解読及びRM-A生合成遺伝子群の解析により、特異なポリケチド骨格形成の鍵となる遺伝子群及び未知生合成反応を触媒する新奇酵素群を見出した。本研究では、化合物の構造形成に重要なポリケチド合成酵素の機能改変、及び難化学合成反応を触媒する生合成酵素群の機能解明により、新規天然化合物の創出基盤の構築を目指している。そこで、I) RM-A生合成遺伝子クラスター全長をBACベクターに導入後に、放線菌で異種発現を検証するとともに、ポリケチド合成酵素 (PKS)のドメイン改変を行い天然化合物の構造多様化を進めている。II) RM-A生合成遺伝子クラスターから取得されたスピロアセタール環構造を水酸化する酵素 (P450revI)の結晶構造を基盤として、部位特異変異の導入を進めいている。III) 有機合成化学的に困難な3級水酸基エステル化反応の分子レベルでの解明を目指している。各酵素を大腸菌およびStreptomyces lividans TK23を用いて異種発現・精製し結晶化条件の検討を行っている。IV) 脂肪酸生合成に関わる新規酵素の解析を進めている。以上の知見を統合してポリケチド構造多様化に向けたコンビナトリアル生合成を展開している。
2: おおむね順調に進展している
I. ポリケチド構造の多様化: Reveromycin A (RM-A) 生合成遺伝子クラスター全長を有するBACベクターを構築に成功した。また、Streptomyces avermitilis (SUKA17株)をホストに用いて形質転換体を調製した。II. 結晶構造を基盤としたスピロアセタール水酸化酵素の改変: RM-Aの3級水酸基のエステル化には足場としてスピロアセタール環の水酸化が必須である。さらなる構造展開に向けて、P450revIと基質RM-Tの共結晶構造を基盤として、部位特異的変異を導入した。III. 3級水酸エステル化機構の解明 : RM-A生合成の最終段階はRM-T1からRM-Aへの3級水酸基のエステル化である。反応機構解析を目的として、異株発現・精製した酵素を調製し、結晶化条件の検討を行った。
I. ポリケチド構造の多様化: Streptomyces avermitilis (SUKA17株)をホストに用いて形質転換体を調製し、RM-A生産を確認する。また、BACベクターを保有する大腸菌を使用し、acyltransferase (AT)ドメイン改変を検討し、代謝産物の生産を検証する。II. 結晶構造を基盤としたスピロアセタール水酸化酵素の改変: P450revIと基質RM-Tの共結晶構造を基盤として導入した部位特異的変異酵素を解析する。III. 3級水酸エステル化機構の解明 : 異株発現・精製した酵素の結晶化条件の検討を行い、得られた結晶についてX線構造解析を試みる。IV. 脂肪酸生合成に関わる新規酵素の反応機構解析: RM-A生合成において、側鎖の生合成に関わると予想されるRevRの結晶化を試みる。
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http://www.csrs.riken.jp/jp/labs/npbu/index.html