研究課題/領域番号 |
16H04906
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
魚住 信之 東北大学, 工学研究科, 教授 (40223515)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | リン酸化酵素 / パルミトイル化 / 気孔閉鎖 / カルシウム / イオンチャネル |
研究実績の概要 |
ClチャネルのSLAC1の制御因子であるCPK6リン酸化酵素のN末端領域にある脂質付与アミノ酸を置換体非 (CPK6-G2A, CPK6-C5S)とSLAC1をアフリカツメガエル卵母細胞に共発現させて,SLAC1電流を二本刺し膜電位固定法による測定を行った,この結果,ミリスチン酸とパルミチン酸の付与が考えられるアミノ酸がSLAC1の輸送活性発現に必須であることが分かった. また,脂質修飾の膜局在性とチャネル輸送体の活性化を植物で調べるために,CPK6の非脂質修飾変異体(CPK6-G2A, CPK6-C5S)をcpk6植物に導入して気孔の閉鎖度を調べた。この結果,CPK6のミリスチン酸とパルミチン酸の付与が気孔閉鎖にも必要であることが分かった.以上により,in vitroとin vivoの脂質修飾検出と異種発現系と植物における脂質影響と輸送体活性化および気孔閉鎖に関する結果の両者が一致し,脂質修飾が細胞内因子の活性化と輸送体の機能発現に必要であることが明らかになった. CBL5のパルミトイル化を生化学的に調べるためCBL5-C3S,CBL5-C5SとGFP融合蛋白質を動物培養細胞COS-1とタバコ細胞に導入し膜局在化の顕微鏡観察を行った。パルミトイル化部位を置換したCPK6-C5Sおよび,パルミトイル化に影響を与える可能性のあるミリストイル化部位を置換したCPK6-G2Aと野生株を比較したところ,ルミトイル化が細胞内局在性に必要であることが証明された. Arabidopsisの膜電位依存性Kチャネル(GORKとSKOR)にあるGly2のミリストイル化モチーフを確認するために,両チャネルの N末端領域10アミノ酸をTNFレポーター蛋白質に融合させて昆虫無細胞翻訳系による,放射性標識したミリスチン酸の取り込みの有無を調べた.しかし,脂質の修飾は検出されなかったことからこのGlyはミリスチン酸付与アミノ酸として機能しないことが分かった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルシウム依存性リン酸化酵素関連タンパク質のミリスチン酸修飾及びパルミチン酸修飾の検討をすすめてきた.小麦胚芽無細胞翻訳系と昆虫無細胞翻訳系の両系で検討を行った結果,44個のタンパク質の中でほとんどのタンパク質においてミリスチン酸修飾が観察された.高い頻度で生じる脂質修飾はこのファミリーのタンパク質が生体膜で機能することを強く示唆している.Ca依存的に機能するリン酸化酵素が膜タンパク質の活性を調節すること可能性を示したことから,Caシグナルが生体膜機能の調節をこれらのタンパク質を介して行うことを強く示唆している. CPK6とCBL5のパルミトイル化を植物,動物細胞で明らかにし,資質修飾の必要性が明らかとなった.また,CPK6のミリスチン酸とパルミチン酸の付与が気孔閉鎖にも必要であることも証明できた.in vitroとin vivoの脂質修飾検出と異種発現系と植物における脂質影響と輸送体活性化および気孔閉鎖に関する結果の一致は脂質修飾が細胞内因子を細胞膜へ移行を促して,輸送体の機能発現に必要であることを示している.
|
今後の研究の推進方策 |
今回の検討から,CBLがCIPKと相互作用して,細胞膜に移行して輸送体をリン酸化する可能性が示された.CBL5と相互作用する候補CIPKの同定をすすめ,細胞内で相互作用とCIPKによるリン酸化を検討する必要がある.In vitroでは,ミリスチン酸修飾とパルミチン酸修飾を別の検討方法で検出を行ったが,in vivoとなる植物細胞や動物培養細胞では両脂質修飾の両方が生じることから,細胞内における反応の検出をすすめる.また,リン酸化についても,CBL5と相互作用するCIPKを対象に検出を図り,リン酸化による輸送体の調節機構を明らかにする検討をすすめる.
|