研究課題
TrxR3610をコードする遺伝子をクローニングしたベクターをE. coli BL21(DE3) に導入し、発現させたタンパク質をNi-NTA カラムを用いて精製した。精製したTrxR3610の吸収スペクトルを測定した結果、FADに由来する375 nmと450 nm付近にピークが認められ、本精製酵素がFADを保持していることが示された。TrxR活性は、DTNBを基質として酵素依存的に生成されるTNBの吸光変化を波長412 nmで測定した。この反応系を用いて、至適温度、至適pH、熱安定性を求めた結果、TrxR3610の至適温度は35℃、至適pHは8.0であった。また活性は50℃まで維持された。次に、TrxR3610と同様にTrxR976をコードする遺伝子をクローニングしたベクター(pCold_trxR976)をE. coli BL21(DE3) に導入し、TrxR976タンパク質の精製を試みた。しかし、発現させたTrxR976は大部分が不溶化してしまったため、タンパク質精製のために可溶化条件の検討を行った。可溶化条件を検討した結果、E. coliのtrxR 欠損株にpCold_trxR976を導入した際に最も可溶化した。本菌をソルビトール・ベタインLB培地にて培養し、発現させたタンパク質をNi-NTAカラムを用いて精製した。精製酵素のスペクトル解析ではFADに由来するピークが認められたにも関わらず、上記のDTNB法ではTrxR活性を示さなかった。以上の結果より、TrxR3610はTrxRとして機能する一方、TrxR976はTrxRとしての機能を持たないことが示された。
2: おおむね順調に進展している
細菌における新規のセレンタンパク質生合成因子の可能性が示唆されるTrxRホモログTrxR3610について諸性質を解明すると共に,もう一方のホモログであるTrx976は従来のTrxRでは無いことが示唆される結果を得た。本成果は,不明な点の多い細菌のセレンタンパク質生合成因子に関して重要な示唆を与えることから,研究はおおむね順調に進展していると考える。
申請時の計画の通り,セレンタンパク質生合成因子の発現解析を行う予定である。また,2016年度の結果を踏まえて,TrxRの更に詳細な構造機能解析も行う予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
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