研究課題
Pseudomonas sp. F2a 株由来の TrxA と TrxR を His タグ融合タンパク質として精製した。また、TrxA の活性中心である WCxxC モチーフに変異を導入し、変異型 TrxA (C33A、C36A、および C33A/C36A) を作製・精製した。精製したタンパク質を用いて、亜セレン酸を基質とする還元活性を調べた。野生型では還元活性が示される一方で、変異型では野生型と比較して著しい活性の低下が認められた。また、セレン酸、亜硫酸、チオ硫酸を基質とした還元活性測定では、 TrxA は活性を示さなかった。これらの結果から、TrxA は亜セレン酸に特異的な活性を有することが明らかとなり、この反応には二つの Cys 残基が重要であると示された。次に、TrxA の亜セレン酸還元過程における反応中間体の存在および化学形態を調べるために、 TrxA と亜セレン酸との反応産物を ESI-MS により解析した。その結果、野生型では、タンパク質単体のピークに加えて、反応中間体と思われるピーク (TrxA + 97 Da) が検出された。一方で、変異型では C36A のみにセレン単体 (TrxA + 78 Da) が結合した反応中間体と推測されるピークが検出された。これらの結果から、野生型では活性中心の二つの Cys 残基にセレン(79.0 Da)と酸素(16.0 Da)を結合した化学形態を形成していることが示唆された。さらに、亜セレン酸と反応させた TrxA の酸化還元状態を調べるために、チオール修飾剤を利用したゲルシフトアッセイを行った。その結果、TrxA は亜セレン酸との反応前後で活性中心である二つの Cys 残基を消費していることが示された。以上の結果より、TrxA は活性中心にある二つの Cys 残基の内、まず Cys33 が亜セレン酸に対して作用することで反応が進行し、次に Cys36 が Cys33 に結合したセレンに特異的に攻撃し、TrxA-亜セレン酸中間体を介して安定的に SelDへとHSe- を供給することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
細菌のセレンタンパク質生合成における、チオレドキシンが介する亜セレン酸還元の詳細な機構を初めて明らかにしており、活性型セレンの特異的経路の解明に大きく寄与する成果を得ていることから、研究はおおむね順調に進展していると考える。
申請書の計画に沿って最終年度の研究を遂行するとともに、最近新たな知見を得た、G. sulfurreducensの亜セレン酸還元経路について、新奇経路の解明を目指す。
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