研究課題/領域番号 |
16H04914
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
米山 弘一 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 名誉教授 (00114174)
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研究分担者 |
秋山 康紀 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20285307)
謝 肖男 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 准教授 (30610323)
野村 崇人 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 准教授 (60373346)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ストリゴラクトン / カーラクトン / 枝分かれ抑制ホルモン / 構造決定 / 導管液 / 細胞間移動 |
研究実績の概要 |
地下部から地上部へのストリゴラクトン(SL)の移動は、構造および立体選択的であり、オロバンコール(O)型SLを生産するイネの根部にストリゴール(S)型SLを処理しても地上部へは移行しない。この時、地上部の枝分かれは抑制されることから、地下部から地上に移動する未知の枝分かれ抑制ホルモンの本体を探索した。まず、イネ(野生型、SL生合成欠損変異体d10、SLシグナル伝達変異体d14)にS型SLを根部処理し、20時間後に地上部を回収してSLおよびカーラクトン(CL)誘導体を網羅的に分析した結果、根部処理したSLは、別のシグナル物質に置き換わって導管中を移動している可能性が強く示唆された。そこで導管液中に含まれるCL誘導体およびSL関連化合物を精査した。その結果、イネ導管液にはCL誘導体と考えられる少なくとも2種類の化合物が含まれていることが分かった。これらの物質はイネ以外に、トマト、カボチャ、キュウリなどの導管液中にも検出された。その構造はLC-MS/MS分析データから、ヒドロキシカーラクトン酸とそのメチルエステルと考えられた。新たに調製した合成標品との比較から、枝分かれ抑制ホルモンと考えられるヒドロキシカーラクトン誘導体の構造をほぼ特定することができた。しかしこれらの物質が枝分かれ抑制ホルモンの本体であるか否かについて、生理学的な解析が必須であり、そのためには導管液あるいは植物体(根)、あるいは異種発現させたSL生合成酵素を用いたインビトロ変換系によって生理実験に必要な量を確保する。また、構造確定のためには、少なくとも1H-NMR測定が不可欠であり、必要な量を確保したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
枝分かれ抑制ホルモン本体の構造をほぼ決定した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、枝分かれ抑制ホルモンの本体と考えられる導管液中に含まれるCL誘導体の構造を確定する。現在のところ、合成標品とのLC-MS/MSによる比較しかできていないので、導管液および植物体(根)、また、異種発現させたSL生合成酵素を用いたインビトロ変換系によってさらに量を確保し、生理試験を行うとともに1H-NMRデータを取得する。なお、化学的な不安定さから単離が困難である場合には、誘導体化などによって安定化させる方策を検討する。さらに合成標品については、光学異性体の分離を行い、キラルカラムを用いたLC-MS/MS分析により天然物の立体化学を決定する。
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