研究実績の概要 |
放線菌における二次代謝生合成、形態分化、シグナル分子制御の統合深化を目指し、平成29年度は以下の3課題を遂行した。 (1) 特異生合成マシナリーの機能解析【二次代謝生合成】:Streptomyces rochei遺伝子破壊株解析を通じて見出したアゾキシアルケン化合物KA57-A、ポリケチド化合物ペンタマイシン、シトレオジオールの生合成マシナリーに注目した。KA57-A生合成に関し、ヘキシルアミン以外の鎖長のアミンを添加してprecursor-directed 生合成に賦したところ、C6以外の鎖長を有するアゾキシアルケンは取得できなかった。このことより、本生合成における厳密な鎖長認識が示唆された。 (2) シグナル分子制御シグナルカスケードの網羅的解析【シグナル分子制御】:TetR型リプレッサー遺伝子srrBの変異によりLCは11倍、LMは4倍の生産量増大が認められたが、経時変化を調べたところ、親株と比較して培養後期での抗生物質生産が引き続き顕著に認められた。srrA, srrB, srrYの発現を調べたところ、転写活性化因子遺伝子srrYの発現がsrrB変異株においては培養後期も引き続いて認められた。このことより、srrB変異株による抗生物質生産向上は、後期発現されるsrrBによる、srrYの一過的発現抑制が失われたためとわかった。 (3) ゲノム比較による形態分化関連遺伝子の抽出と同定【形態分化】:YN-P7, YN-P145株における染色体の欠失領域特定のため、PacBio RS-II次世代シークエンサー解析を行った。両株の欠失領域はYN-P7株において左末端75.5 kb, 右末端912.5 kbであり、YN-P145株においては左末端602.9 kb, 右末端933.8 kbであった。両株の欠失サイズは0.98 Mb, 1.51 Mbであることが分かった。
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